合併症を起こさず安全に手術をおこなうには、医師や看護師だけでなく機器類の技士など多職種の協力が欠かせない。手術数は、その態勢が整っているかどうかの目安にもなりうる。

「グリオーマや小児脳腫瘍など悪性の場合は、外科だけでなく内科や放射線科、リハビリなどのスタッフが連携して治療に当たることが必須です。一定数のグリオーマの手術件数(10~20件程度)を扱っている病院なら、院内の連携態勢が整えられ、それなりの経験もあると考えてよいでしょう」(山本医師)

 常勤医数は、一概に多いほうがいいとは言えない。常勤医が多ければ、その分1人当たりの手術数は少ないかもしれず、逆に少ない常勤医でも多くの手術をこなし、実力・経験ともに豊富な場合もあるからだ。

「大学病院などでは、医局員が大勢いて皆が手術をしているところもあれば、実際に手術をしているのはほぼ教授だけ、というところもあり、さまざまです。不安があれば、脳腫瘍の手術を担当している医師に、直接治療の相談をしてみるとよいかもしれません」(同)

 また脳腫瘍の手術や治療には、多くのスタッフを要する術中モニタリング検査などの設備やリハビリが必要で、一般的には良性・悪性や腫瘍の種類に関係なく、大学病院やがんセンターに患者が集まる。

「患者が集約化されるため、どの腫瘍の治療経験もあり、機器類やスタッフもそろっています。地域での病院選択では、まず最寄りの大学病院やがんセンターを中心に考えてみるのもよいと思います」(成田医師)

 脳腫瘍は悪性だけでなく良性で全摘出できた場合でも、再発の可能性はゼロではなく定期的なフォローが欠かせない。長年通い続けられる場所であることも一つのポイントになるだろう。

 手術数ランキングのデータは、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』に掲載しているので参考にしてほしい。(文/梶 葉子)

≪取材した医師≫
国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科長 成田善孝 医師
横浜市立大学病院 脳神経外科 診療科部長/主任教授 山本哲哉 医師

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より