(イラスト/寺平京子)
(イラスト/寺平京子)

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。病院ランキングだけでなく、治療法ごとの最新動向やセカンドオピニオンをとるべきケース、ランキングの読み方などを専門の医師に取材して掲載している。ここでは、「脳腫瘍手術」の解説を紹介する。

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 脳腫瘍には髄膜腫や下垂体腺腫、神経鞘腫などの良性の腫瘍と神経膠腫(グリオーマ)に代表される悪性の腫瘍があり、治療方法が大きく異なる。手術で切除できれば治癒することも多い良性と違い、悪性は再発を繰り返すことも多く、グリオーマで最も多い膠芽腫の5年生存率は現在でも20%に満たない。しかし近年、手術や放射線、化学療法の進歩により、再発もなく長期間元気に暮らす患者も少しずつ増えているという。

 国立がん研究センター中央病院の成田善孝医師は、次のように話す。

「脳腫瘍の診断には組織検査だけでなく遺伝子検査も必要で、化学療法の効果予測も可能になってきましたが、これらの検査は大学病院やがんセンターでしかできないことが課題です。2019年6月から、標準治療が終了した固形がん(脳腫瘍)の患者さんに対するがん遺伝子パネル検査が保険適用になりました。今後は脳腫瘍の患者さんにも効果的な分子標的薬の使用が期待され、すでに治験なども複数おこなわれています」

 また手術方法も変化しており、良性腫瘍では従来の開頭手術だけでなく、鼻から内視鏡を入れておこなう手術も増えている。横浜市立大学病院の山本哲哉医師は言う。

「良性腫瘍では内視鏡手術の適用範囲が飛躍的に広がりました。下垂体腺腫や頭蓋咽頭腫、髄膜腫など頭蓋底にできた腫瘍の一部でも可能になり、レベルも上がってきています。ただし、開頭を避けて何でも内視鏡でやるというのではありません。腫瘍をしっかり切除して病気を治す、ベストな方法としての選択肢が増えたということです」

 悪性腫瘍の手術では、脳の機能を損なわずに腫瘍を最大限切除するため、手術中に麻酔から一時的に覚醒させて機能を確認する覚醒下手術や、脳波・筋電図モニタリング、手術ナビゲーション、術中MRIなど、術中の安全性を確保するための方法も進化している。

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悪性脳腫瘍でセカンドオピニオンをとるときの留意点は?