しかし、その一方で不安要素がないわけではない。2012年の日本シリーズで当時2年目だった沢村拓一の頭をマウンド上ではたいた件は今となっては良いエピソードかのように語られているが、現在の野球界ではこのような指導法は良しとされないケースが多い。

 二軍監督就任後も、若手選手を突き放すようなコメントが目立つのも気になる点である。自身はいきなり巨人の正捕手に抜擢されてあらゆるバッシングを乗り越えてきたという自負があるから、若手にもそれを期待するというのも分からなくはないが、そのやり方で上手くいかない選手が出てくることも多いに考えられる。同じチームに居続けるメリットもあるが、その一方で視野が狭くなってしまうという危険性も同時にあるだろう。

 果たしてそのような不安を払しょくして、指導者としても一流になることができるのか。まずは二軍監督としてどのような結果を出すのかに注目したい。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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