沿線の絶景や美食などをテーマに、設備やサービスに趣向を凝らした観光列車。いまや鉄道の旅の1ジャンルを確立するまでに成長を遂げてきたが、お隣・韓国でもここ10年ほどの間に続々と観光列車が登場し人気を集めている。車窓をテーマにした列車はもちろん、“秘境駅”を活かした列車や非武装地帯観光という韓国ならではの列車までお目見え。日本とちょっと違う韓国の観光列車のいくつかを紹介してみたい。
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■冬ソナロケ地から兵士詰所まで見どころ満載「海列車」
かつては「カメラを向けると逮捕されますよ!」などとまことしやかに噂された韓国の鉄道だが、いまや駅などで一眼レフやスマホを列車などに向けている姿はどこにでも見られるし、かなりマニアックな鉄道写真をSNSなどにアップしている韓国人も少なくない。どうやら、韓国でも鉄道趣味が広がってきたようなのである。
一方、鉄道会社も積極的に鉄道の旅を売り出すようになった。その代表的存在が観光列車だろう。2020年2月現在、愛称で6列車が定期列車に準ずる形で運行されているほか、ツアー形式の運行も実施されている。
実は韓国でも観光用をうたった列車は古くから運行されてきた。一時は蒸気機関車を用いた臨時列車も走らせていたが、現在の流れをつくったのは、2007年7月にデビューした「海列車(パダヨルチャ)」であろう。
「海列車」は韓国北東部の江陵(カンヌン)と三陟(サムチョク)とを結ぶ観光列車で、その名のとおり海辺の眺望がテーマ。韓国の鉄道では海沿いの車窓がごく限られているが、貴重な例外が東海岸に面したこの区間。車内は劇場風に日本海側(韓国では東海)に座席が向けられ、ボックス(家族)席や二人用個室(プロポーズ室)、車内放送スタジオを兼ねた売店などが揃う。ちなみに、車窓に展開する海岸線には鉄条網や兵士の詰所などもうかがえ、日本とは異なる環境にも目を奪われるに違いない。
また、沿線には日本でもブームを巻き起こした『冬のソナタ』をはじめとするドラマや映画の撮影地も多く、それを目的とした利用者も多い。沿線中の正東津(チョンドンジン)は海に最も近い駅として「ギネスブック」に掲載され、韓国屈指のご来光スポットとしても知られている。