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人生はみずからの手で切りひらける。そして、つらいことは手放せる。美容部員からコーセー初の女性取締役に抜擢され、84歳の現在も現役経営者として活躍し続ける伝説のヘア&メイクアップアーティスト・小林照子さんの著書『人生は「手」で変わる。』からの本連載。第1回は、嫌なことを後回しにしがちな人へのメッセージです。
* * *
朝、私が信条にしていることがあります。それは「面倒なこと」から片付けるということです。私は自分の住まいで猫を飼っています。そこで私は、朝はまず「汚いもの」から片付けます。飼っている猫のトイレを掃除し、家の中で汚れているところもちょっときれいにしてから、花や仏様のお水を替える。
朝、ほんの少し身の回りのことに手をかける。これはもう長いこと、私の日課になっています。
そしてお水を替えたら、自分の身支度です。寝間着から服に着替え、自分の髪、顔を整えます。朝起きたばかりのときの私の顔は、さすがにひとさまにお見せするのははばかられる状態です。私は84歳にしては体力があるほうだと思うのですが、やはり朝はすっきり起きられないときもあります。
でもそこで「体がしんどいから、今日は外出しないで寝間着&ノーメイクでいる」というようなことを始めたら、私の暮らしはたぶん一気に“楽な方向”に流れてしまうでしょう。
それゆえに、私はいつも朝一番に自分の身支度を整えてしまうのです。身支度を整えるということは、自分の「社会性」を維持することにつながります。家の外に出て、ひとに見られても恥ずかしくない出で立ちでいる。これは年を重ねれば重ねるほど「面倒なこと」に感じられるかもしれません。でもそれを放棄してしまっては、「人づきあい」自体ができなくなってしまいます。
「面倒なこと」は、後回しにしないことです。朝起きたときの流れで、勢いでやってしまうのが一番です。
手を抜いたり、楽をして手に入るものはありません。そして、楽をしながら維持できるものもありません。
これは仕事にも言えることです。目の前の「楽」を選べば、大きな成果には結びつかない。
それは「楽」を選ぶ人間のまわりには、「楽」を選ぶ人間しか集まらないからです。だからこそ、私は皆さんにこう薦めています。
自分がいやだなあと思うこと、面倒くさいなあと思うこと、もう逃げだしたいと思うことから、着手していきなさい。つらくても“顔色ひとつ変えずに”乗り越えていく。そんな格好良さが身に付けば、あなたの元には、そういう格好いいひとたちが集まってきます。
世の中というものは、本当に、「類は友を呼ぶ」ということわざ通りなのですから。
【しなやかに生きる知恵】
楽を選べば転がり落ちる
面倒なことから着手する
人生は、「手」で変わる。
小林照子



小林照子
小林照子(こばやし・てるこ)/美容研究家。ヘア&メイクアップアーティスト。1935年、東京都生まれ。東京高等美容学院を卒業後、小林コーセー(現・コーセー)に美容部員として入社。数々の大ヒット商品を手掛け、85年、同社初の女性取締役に就任。その後独立・起業し、美容ビジネスの企業経営や後進を育てる学校運営をおこなっている。『人生は、「手」で変わる。』(朝日新聞出版)、『これはしない、あれはする』(サンマーク出版)、『小林照子流 ハッピーシニアメイク』(河出書房新社)ほか著書多数
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