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人生はみずからの手で切りひらける。そして、つらいことは手放せる。美容部員からコーセー初の女性取締役に抜擢され、84歳の現在も現役経営者として活躍し続ける伝説のヘア&メイクアップアーティスト・小林照子さんの著書『人生は「手」で変わる。』からの本連載。第1回は、嫌なことを後回しにしがちな人へのメッセージです。
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朝、私が信条にしていることがあります。それは「面倒なこと」から片付けるということです。私は自分の住まいで猫を飼っています。そこで私は、朝はまず「汚いもの」から片付けます。飼っている猫のトイレを掃除し、家の中で汚れているところもちょっときれいにしてから、花や仏様のお水を替える。
朝、ほんの少し身の回りのことに手をかける。これはもう長いこと、私の日課になっています。
そしてお水を替えたら、自分の身支度です。寝間着から服に着替え、自分の髪、顔を整えます。朝起きたばかりのときの私の顔は、さすがにひとさまにお見せするのははばかられる状態です。私は84歳にしては体力があるほうだと思うのですが、やはり朝はすっきり起きられないときもあります。
でもそこで「体がしんどいから、今日は外出しないで寝間着&ノーメイクでいる」というようなことを始めたら、私の暮らしはたぶん一気に“楽な方向”に流れてしまうでしょう。
それゆえに、私はいつも朝一番に自分の身支度を整えてしまうのです。身支度を整えるということは、自分の「社会性」を維持することにつながります。家の外に出て、ひとに見られても恥ずかしくない出で立ちでいる。これは年を重ねれば重ねるほど「面倒なこと」に感じられるかもしれません。でもそれを放棄してしまっては、「人づきあい」自体ができなくなってしまいます。
「面倒なこと」は、後回しにしないことです。朝起きたときの流れで、勢いでやってしまうのが一番です。
手を抜いたり、楽をして手に入るものはありません。そして、楽をしながら維持できるものもありません。
これは仕事にも言えることです。目の前の「楽」を選べば、大きな成果には結びつかない。
それは「楽」を選ぶ人間のまわりには、「楽」を選ぶ人間しか集まらないからです。だからこそ、私は皆さんにこう薦めています。
自分がいやだなあと思うこと、面倒くさいなあと思うこと、もう逃げだしたいと思うことから、着手していきなさい。つらくても“顔色ひとつ変えずに”乗り越えていく。そんな格好良さが身に付けば、あなたの元には、そういう格好いいひとたちが集まってきます。
世の中というものは、本当に、「類は友を呼ぶ」ということわざ通りなのですから。
【しなやかに生きる知恵】
楽を選べば転がり落ちる
面倒なことから着手する