介護福祉士・石本淳也(以下、石本):私は特養(特別養護老人ホーム)と老健(介護老人保健施設)で、在宅部門を中心に働いていました。

 ACPは治療方針などをどうするかという話ではなく、今後の人生をどうしていくかという側面がどんどん強くなっていくと思います。介護の現場は生活支援の現場ですから、利用者の思いを聞くということはもともとやっていたことです。これまでやってきていたことをもっと意味のあるものにしていこうという転換が、このACPなのだと思います。わかりやすく「人生会議」と言い換えていますが、一般の人にも理解してもらえるかという視点が大事で、そこはまだいろんな工夫が必要だと率直に思います。

看護師・中島朋子(以下、中島):私は1995年から現在まで、訪問看護をやっています。緩和ケアの認定看護師の資格を持っていることもあり、在宅緩和ケアを専門としています。

■頻繁にご家族や本人とやりとりができれば

中島:ACPについては、いままで自分なりの価値観などを大切にしながら生きてきた方が、今の病状を踏まえて、この先どのように生きていきたいのか、ということを一緒に考えるプロセスなのだと思っています。私もこれまでやってきたことに名称がついたんだなあと感じています。

石本:特養や老健の場合、ご家族との面談のなかで、最初に契約を交わすのですが、そこで「いざというときにどうしますか」と必ず聞きます。救急搬送を望むか望まないかなど。ひととおりお話しするのですが、スムーズに決まるご家族とそうでないご家族がいます。また、話が決まったからといって、いざという場面が来たときにそのとおりにしていいとは限りません。「延命は望まない」と決めていたにもかかわらず、「容体が急変しました」と電話をしたら、「延命してくれ」と頼むご家族もいます。それぞれなんです。

 入所時に1回、1年後にもう一回のような決まったサイクルではなく、もっと頻繁にご家族や本人とやりとりができれば、望みに近づけるのではないかと思います。ACPという言葉が広まることで、コミュニケーションを専門職と利用者側がこまめにとる、ということを期待したいです。

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ケアマネが利用者に伝えるのは、現在の話だけになりがち