松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長
松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長
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※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 ある日突然、いままでやっていた運動動作ができなくなる「イップス」。ゴルファーや野球選手を始め、多くのアスリートたちを苦しめる病気であるにもかかわらず、その原因ははっきりとしていません。「イップス」は克服できるのか、どんな治療を受ければよいのか、日本整形外科スポーツ医学会理事長・松本秀男医師に教えてもらいます。

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 スポーツ界でたびたび話題になる「イップス」とは、どんな病気かご存じでしょうか? それは、これまで普通にできていた運動動作が、なんらかのきっかけで突然できなくなる病気です。もともとはゴルフのパッティングが急に乱れて入らなくなる症状を意味していましたが、いまではゴルフはもちろん、野球、サッカー、テニス、卓球、弓道、ダーツなど、さまざまなスポーツでこの病名が使われ、プロ選手にもアマチュア選手にも起こることが知られています。

 有名なプロスポーツ選手の中には、イップスを発症し、それを乗り越えてプレーを続けている選手がいます。その一方で、イップスを克服できず、ポジション転向を余儀なくされたり、選手生命を絶たれて引退したりした選手も数多くいます。例えば、元・大リーガーのイチローさんは、高校時代にイップスになってピッチャーから野手に転向していたことを以前明かしています。また元プロゴルファーの宮里藍さんは、イップスが原因で正確なパットが打てなくなったことを理由に現役を引退しているなど、枚挙にいとまがありません。そのほか、イップスを公表していない選手も、かなりの数いるはずです。

 長きにわたり、イップスは原因がわからない謎の病気でした。いくつもの病院を受診しても病名にたどりつけないまま、「練習が足りない」「精神的に弱い」などと言われて、追いつめられる選手がたくさんいたのです。しかし、現在のスポーツ医学においてもいまだその実態は十分には解明されていません。

 イップスの現れ方は、人によってさまざまです。例えば、次の通りです。

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メンタル面を重視した治療が有効なケース