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アインシュタイン稲田は“心の男前” 従来の「ブサイク芸人」とは一線を画す理由

連載「道理で笑える ラリー遠田」

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アインシュタインの稲田直樹。コンビとしての実力も高い評価を得ている(C)朝日新聞社

アインシュタインの稲田直樹。コンビとしての実力も高い評価を得ている(C)朝日新聞社

 そんな中で、ブサイク芸人界に新たなスターが現れて話題になっている。アインシュタインの稲田直樹だ。稲田はブサイク芸人界でも規格外の大物と言われている。薄めの頭髪、あごの角度など、各パーツのクオリティが高く、一切のスキがない。前述の開催発表会見でMCを務めた陣内智則も、稲田に関しては「メジャーリーガーが草野球をやっているようなもん」とその圧倒的な実力に太鼓判を押していた。

 だが、稲田が近頃話題になっているのは、その見た目だけが理由ではない。むしろ、内面の明るさやポジティブさが人気を呼んでいるのだ。ポジティブと言っても、井上のような自己陶酔的な勘違いの要素はない。他人から見た30点を自分の中で100点だと思い込むようなズレは稲田にはない。そうではなく、稲田は30点なら30点をありのままに受け入れて、それを心からすばらしいと思うことができる。いわば、地に足のついた本物のポジティブさを持っているのだ。

 稲田はそもそも、自分の見た目が嫌だと思ったことはないという。だから、山里のように卑屈にはならないし、かといって井上のように勘違いもしない。イジられても堂々としていて、細かいことにこだわらない器の大きさを感じさせるので、見ている側が嫌な気持ちにならない。「僕は生まれ変わっても僕でありたい」と本心で言える彼は、まさにブサイク芸人界の革命児なのだ。

 そんな稲田は、いまや若い女性ファンからも圧倒的な人気を誇っている。特に、劇場界隈では稲田の顔をあしらった「いなだま」というキャラクターが人気だ。「いなだまクッション」というキャラクターグッズは、限定販売された際に行列ができたほどだという。

 稲田は見た目や内面だけを売りにしているわけではない。アインシュタインは実力派漫才師として有名で、「上方漫才協会大賞」を受賞したり、「NHK上方漫才コンテスト」で優勝を果たしたりしている。さらに、稲田はピン芸人として『R-1ぐらんぷり』で決勝に進んだこともあり、『人志松本のすべらない話』ではMVS(この番組のMVP)に選ばれた。確かな実力を備えている上に、見た目とキャラクターも愛されているのだから、非の打ち所がない。

「見た目なんて気にせずポジティブに生きよう」と言うのは簡単だが、それを本当にできる人がどれだけいるだろう。他人の目を気にしなくてはいけない、気にするべきだという同調圧力がやたらと強いこの時代に、それをはねのけることができるのは掛け値なしにすばらしい。「ブサイクランキング」で殿堂入りしている稲田は「心の男前ランキング」でも殿堂入り確実の逸材なのだ。(ラリー遠田)


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ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。近著は『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)。http://owa-writer.com/

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