10月16日、水が引いた車両基地(C)朝日新聞社
10月16日、水が引いた車両基地(C)朝日新聞社
10月13日早朝、水没した北陸新幹線の車両(C)朝日新聞社
10月13日早朝、水没した北陸新幹線の車両(C)朝日新聞社

 2019年10月11日未明から13日にかけて、東北・関東甲信越・東海地方を襲った台風19号は、各地に大きな爪痕を残して太平洋へ去って行った。今回の台風は典型的な雨台風で、各地に猛烈な雨を降らせ、鉄道の被害もこれまでとは比べものにならないほど大きいものだった。

【写真】目を疑う、水没した北陸新幹線の車両

 千曲川が氾濫したことで、長野市にある北陸新幹線長野新幹線車両センターが浸水し、留置されていたE7系10両編成8本、W7系10両編成2本が側窓下レベルまで冠水したニュースも、驚きとともに取り上げられた。10編成すべてが廃車になると、その損害額は車両だけで三百数十億円ともいわれているが、再び日の目をみる可能性はあるのか。この車両の特徴に着目して検証した。

*  *  *

■車両の気密性が高いから浮いた

 北陸新幹線用には設計が共通仕様のE7系(JR東日本所属)19本、W7系(JR西日本所属)11本、計30本が在籍しているが、今回冠水したのはそのうちの3分の1に相当する。一部の車両は脱線したが、これは車内の気密性が高いため客室が浮輪の役目を果たし、水面に浮いてしまったものとみられる。

 JR東日本は15日の時点で詳しい現地調査ができていないため、被害状況が把握できていないとしていたが、16日にようやく車両基地の水が引いて点検が行える状態にまでなり、ヘルメットをかぶった作業員が車両の床下を点検する姿が見られた。今後状況が解析されるが、床下機器には電子部品が多く使われ、半導体が水に浸かったことが容易に想像できることからも、修理をして使用するには部品の交換は必須だろう。さらに現段階では発表されていないからわからないが、車内まで浸水していたなら内装や座席の交換まで対象になり得る。

■1本に計20基のモーターを搭載

 北陸新幹線用のE7系・W7系とはどのような車両なのだろうか。車体はアルミニウム合金製で軽量化を図り、東北・北海道新幹線用のE5系・H5系と同等の出力300kWの交流モーターを1両につき2基、12両編成のうち両先頭車以外は電動車なので、1本に計20基のモーターを搭載する。この交流モーターは電圧と周波数をコントロールすることで制御するVVVFインバータ制御方式を採用、直流電気を交流電気に変換する装置に半導体素子が用いられている。

次のページ
碓氷峠越えを可能にした強力な出力