千葉大学病院・精神神経科特任助教の大石賢吾医師が、認知症、発達障害に関するあなたの悩みにおこたえします! あらゆる人間関係、組織のなかで、相談者や家族の身に起きている事態をお聞かせください。採用されたご相談は本連載で紹介します。
千葉大学病院・精神神経科特任助教の大石賢吾医師が、認知症、発達障害に関するあなたの悩みにおこたえします! あらゆる人間関係、組織のなかで、相談者や家族の身に起きている事態をお聞かせください。採用されたご相談は本連載で紹介します。
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 発達障害の一つ、自閉症スペクトラム障害(ASD)は遺伝するのか? という相談に対し、千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師は、前々回の本コラムで「これまでの研究から遺伝的要因が存在していることは明らかと思われるものの、それだけが原因ではないとする研究結果もあるのが現状です」と回答しました。遺伝以外で発症に影響を与えるものとして環境要因を挙げていましたが、今回は、環境要因について解説します。

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≪前々回の相談の再掲≫【20代男性Aさんからの相談】自閉症スペクトラム障害の兄がいます。自分は高校から実家を離れたのですが、以前は突然きっかけがわからず叫び出したりして大変でした。最近は仕事が忙しくて実家にもなかなか帰れず、兄と直接会う機会もないので詳しい様子はわからないのですが、仕事に就くのは難しく実家で両親と暮らしているようです。そこでご相談なのですが、実は、小さい頃から「自分も同じようなところがあるんじゃないか」と心配でたまりませんでした。両親や周りの友達は大丈夫と言ってくれるんですけど、もしかしてと思ってしまいます。やっぱり、遺伝するんでしょうか。

 今回は、2019年9月5日に配信したコラムの続編になります。

 前回の発達障害のコラムでは、ASD(自閉症スペクトラム障害)について一定の遺伝性が認められる報告があることを紹介しました。一方、同じ遺伝情報を持つ一卵性双生児でASDの発症が必ずしも一致しないことを例に、遺伝だけで説明することもできないとお話ししました。

「じゃあ、どっちなの?」ですよね。

 同コラム内では、遺伝以外で発症に影響を与えるものとして環境要因を挙げ、「いつか機会があれば」としていたのですが、配信後に「環境要因ってなに?」、「結局、遺伝と環境要因ってどっちが原因なの?」といった意見をいただきました。

 環境要因による影響については、多くの部分が未解明で混沌としているため、誤解を避けるためには取り上げにくいテーマであるのですが、それゆえに、誤って認識されていることも少なくないように思います。

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大石賢吾

大石賢吾

大石賢吾(おおいし・けんご)/1982年生まれ。長崎県出身。医師・医学博士。カリフォルニア大学分子生物学卒業・千葉大学医学部卒業を経て、現在千葉大学精神神経科特任助教・同大学病院産業医。学会の委員会等で活躍する一方、地域のクリニックでも診療に従事。患者が抱える問題によって家族も困っているケースを多く経験。とくに注目度の高い「認知症」「発達障害」を中心に、相談に答える形でコラムを執筆中。趣味はラグビー。Twitterは@OishiKengo

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