今回は、それぞれを詳細にとは及びませんが、最近議論されている環境要因を紹介し、遺伝と合わせてASDの発症がどのように考えられているか(仮説の一つとして)皆さんと一緒に考える機会にできればと思います。

 さて、早速、環境要因の候補についてですが、現在も世界中で様々な研究が活発に行われている分野であるため、私自身の勉強のためにも最近の文献をいくつか読んでみました。

 どこかで耳にしたことがあるような要因では、実親の年齢、発達段階での感染症や薬物への曝露(よく取り上げられるものとして、抗てんかん薬・気分安定薬として用いられるバルプロ酸)、低体重や早産といった周産期イベントなどが挙げられるかと思います。

 他にも飲酒や喫煙、中には大気汚染というものもありました。また、これらに加えて、各種栄養素や糖尿病、高血圧などの合併症など、関連の可能性を論じられているものは多岐に及びます。(※関連性が疑われているそれぞれのものについて相反するデータも存在し、リスクと扱うことが必ずしも正確でない可能性がありますので留意ください)

「こんなにあったらどれが原因か分かんないでしょ……」。こう思われた人もいたのではないでしょうか。しかし、(私見ですが)ざっくりというと、それがまさに我々が直面している現状なのだと思います。

 もちろん、それぞれの候補について多くの研究がなされていて、科学的には重要な知識の積み重ねがあります。しかし、いずれもASDの原因を突き止めるには至っておらず、与える影響の程度も一定ではありません。

 例えば、時折メディアでも取り上げられる実親の年齢との関係をみると、年齢の高いお父さん、お母さんから生まれた赤ちゃんがASDになるリスクは、それぞれ1.55倍、1.41倍だったと報告されています(引用1)。言い換えると、通常でも100人の赤ちゃん中3人がASDとなったと仮定して、お父さんの年齢が高い場合でも、およそ4.65人程度の予測になります。

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環境要因の影響が大きいものは…