作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
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写真は本文とは関係ありません(※イメージ写真/iStock)
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 鴻上尚史人生相談。高校生だった息子に届いた彼女からの手紙を隠して捨てたことが数年後にばれ、息子が冷たくなったと吐露する62歳の母親。息子のためにしたことがなぜ毒親呼ばわりなのかと納得できない相談者に鴻上尚史が問う「どこまで子供の立場を尊重するか」。

【相談44】息子を思う親心が、毒親呼ばわりされなくちゃいけないのですか?(62歳 女性 みどり)

 アニメグッズを捨てた母親を恨む男性の投稿を読んで、私と息子のことのようで心が波立ちました。Twitterなどでもみなさん、その親御さんのことを「毒親」だと非難ばかりしています。でも、息子のことを思ってした親が、そんなに悪者で毒親呼ばわりされなくちゃいけないんでしょうか。

 私は息子が高校生のときに、ポストにあった息子の彼女からの手紙を、読んでしまったことがあります。その頃、息子はその子とつきあいだしてから、帰宅が遅くなり、その子とのデートのためにバイトをするようになり、あきらかに利用されて振り回されていました。交際に反対しても聞く耳をもってくれませんでした。

 手紙には、その子から別れ話を切り出したことの撤回と、誕生日に◯◯に来てほしいと日時が書かれていました。私は、その頃落ち込んでいる様子だった息子を思いながら、その子は誕生日プレゼントが欲しいだけなんじゃないかと、猛烈に腹がたち、もちろん迷いはありましたが、心を鬼にして、その手紙を数日隠してから捨てました。

 それから8年経って、社会人になった息子にそのことがばれました。同窓会でその子と会ったらしいのです。

「なんでそんな勝手なことしたんだよ」と言われて、つい「知らないわよ。でもあの子に利用されてただけだったじゃない。あのままじゃ大学だって落ちてたわよ」と言い返してしまいました。

 私の買い物に車を出してくれるようなやさしい息子だったのに、それからは素っ気なくなり、一人暮らしを始めてしまいました。音信不通になったわけではないですが、あそこから息子との関係は変わってしまったと思います。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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