でも、「本当は反対したいんだけど、もう30代後半だから、世間の目はあるし、とりあえず、結婚は認めるけど、生活や孫の問題に関してはちゃんと応援して、見てあげないと」と思っているのなら、息子さんとの距離はもっと離れる可能性があると思います。

 みどりさん。どちらの気持ちですか?

 息子さんの気持ちは、「アニメグッズを捨てた母親を恨む男性」と同じように、今のままでは変わることはないと、残念ながら思います。

 みどりさんとしては、とても悲しく辛いことでしょうが、あの当時の自分は正しいことをしたんだと、受け入れるしかないと思います。

 高校生だから、そうしたんだ。成人してからは、もう、私は息子を「一人の人間として尊重している」という場合は、ひょっとしたら、息子さんが結婚した場合は、変わるかもしれません。息子さんに子供ができて親になった場合、息子さんから、「許しはしないけど、少しは理解できる」という言葉が出るかもしれません。

 いずれにしろ、仮定の話です。20年近く前のことをあれこれと気に病むより、ご自分の人生を楽しむことをお勧めします。いつまでも、息子さんのことを気に病んでいたら、息子さんも気にしてしまうと思いますから。

 まだまだ、人生、先が長いんですから。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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