20代最後、好きなことを突き詰めよう!とパッションだけで渡米した武井さん。ロサンゼルスに来てからはワイン知識を生かして交友を広げ、通っていたコルドン・ブルーでワインの専属講師の仕事を得て働くようになる。そんな折、一時帰国した日本で、たまたま三重県・伊賀にある長谷園(ながたにえん)という8代続く窯元が作る「かまどさん」という炊飯用の土鍋に出会う。

「もちろん土鍋はロサンゼルスに来てからも日系スーパーで買って使っていましたが、浦和の伊勢丹で『かまどさん』に出会い、即購入し、抱っこしてアメリカに戻りました。さっそく『かまどさん』でご飯を炊いて食べたら『こんなにおいしくご飯が炊けるんだ!』と感動して、周りのアメリカ人の友人たちにも食べさせたんですね。すると、みんなが『本当に美味しい!』とめちゃくちゃ感激して、『この鍋はどこで買えるんだ?』と聞かれ、『いや、アメリカでは売ってないのよ』と答えたんですが、いや、待てよ、これ、私がアメリカで売ったらどうだろう?これを広めたらいいんじゃないか?と思ったんです」

 そこから武井さんと土鍋とのグレート・ジャーニーが始まる。

■船便の半分以上がバラバラに

 さっそく伊賀にある長谷園のホームページの“問い合わせ”欄に、「私はアメリカに居て、土鍋を輸入販売したいと思いますが、輸入とかやったことがなくてやり方が分からないのですが、それでもやりたいと思っています。興味がありますか?」と書き込むと、窯元から「一緒に勉強しながらやりましょう」と返事が来た。すぐにまた日本へ帰国し、三重へ飛んで窯元さんに会った。「だって、私がどんな人か分からないでしょう?」というわけだ。

 しかし、ズブの素人。困難の連続だ。

「土鍋の輸入方法を探り、まずは1つ、空輸で送ってもらうと土鍋よりも送料の方が高くついてしまい、これじゃ商売になりませんねって。次に船便に挑戦して20個オーダーして送ってもらったんですが、半分以上がバラバラに割れて届いたんです。土鍋を売るために会社を5000ドルの資金で立ち上げたんですが、そのほとんどがこの壊れた土鍋で消えちゃいました」

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土鍋を販売するホームページも立ち上げた