千葉大学病院・精神神経科特任助教の大石賢吾医師が、認知症、発達障害に関するあなたの悩みにおこたえします! あらゆる人間関係、組織のなかで、相談者や家族の身に起きている事態をお聞かせください。採用されたご相談は本連載で紹介します。
千葉大学病院・精神神経科特任助教の大石賢吾医師が、認知症、発達障害に関するあなたの悩みにおこたえします! あらゆる人間関係、組織のなかで、相談者や家族の身に起きている事態をお聞かせください。採用されたご相談は本連載で紹介します。
※写真はイメージです(写真/getty images)
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 親が高齢になると、さまざまな病気で薬を飲んでいるケースが少なくありません。認知症を患っていると、薬を飲んでくれないという問題も出てきます。千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師が相談に答えます。

【※7月18日に配信した記事は、筆者が承知していない文章の修正が入っており、必ずしも伝えようとした形でなかった可能性があったため、筆者のもとの文章に差し替えています。2019年7月20日12時20分】

【50代女性Aさんからの相談】二人で一緒に暮らしている母親の介護をしています。認知症なのですが、施設に入れるのは可哀想だし、今のところ危ないことはしないのでどうにか自宅でみています。少しでも元気でいてほしいので治療もしっかりしてもらいたいのですが、最近ちゃんと薬を飲んでくれません。生活もギリギリで、私の仕事はやめられないのですが「症状が進んでしまったら」と考えると気持ち的にも余裕がありません。なにか薬を飲んでくれるようなよい工夫はありませんか?

*  *  *

 生計を立てながら介護もされているとのこと。Aさんの負担は心身ともに語るに尽くせぬものと思います。それがお母様ということであればなおのことでしょう。そんななかでも、大切な人の健康を願う気持ちには敬意を感じずにはいられません。

 お薬を決まったとおりに飲むということは、認知症患者の介護でも比較的よく直面する問題の一つです。介護における支援は生活全般におよぶため、問題となる事項も幅広いものですが、この相談にお答えすることで、介護をされている人やこれから始められる人にも一考の機会を提供できればと思い、お答えさせていただくことにしました。

 私が診療を通して認知症患者さんとそのご家族にどのように接しているかご紹介することで、Aさんや似た境遇におられる読者の人がより多くの選択肢から対応を検討できるきっかけになればと願っています。

 まず、Aさんの質問にお答えしたいと思います。お薬の順守がうまくいっていない場合、何が問題になっているか整理する必要があります。これらを考えるとき、少なくても (1)管理、(2)内服、(3)理解、(4)信頼関係の四つがあるように思います。

 それぞれに例を挙げると(1)管理:飲む回数が多くてうっかり忘れてしまう。複数の病院から薬をもらっていて、どれがどれだかわからなくなってしまう。(2)内服:錠剤が大きくて、あるいは多すぎてのみ込めない、(3)理解:薬が必要な状態だと思っていない、(4)信頼関係:家族が心配するから薬はもらうけど、飲んでよくなると思っていない。もしくは、そもそも医師のことを信じていない。というところでしょうか。

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大石賢吾

大石賢吾

大石賢吾(おおいし・けんご)/1982年生まれ。長崎県出身。医師・医学博士。カリフォルニア大学分子生物学卒業・千葉大学医学部卒業を経て、現在千葉大学精神神経科特任助教・同大学病院産業医。学会の委員会等で活躍する一方、地域のクリニックでも診療に従事。患者が抱える問題によって家族も困っているケースを多く経験。とくに注目度の高い「認知症」「発達障害」を中心に、相談に答える形でコラムを執筆中。趣味はラグビー。Twitterは@OishiKengo

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