温厚なイメージのある古田敦也だが… (c)朝日新聞社
温厚なイメージのある古田敦也だが… (c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 2019年シーズンもオールスターの時期が近づき、前半戦がまもなく終了するが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、現役時代に数々の伝説を残したプロ野球OBにまつわる“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「巨人vsヤクルト三大乱闘編」だ。

*  *  *

 長嶋巨人vs野村ヤクルトの対決は、“1990年代最大の因縁対決”として注目を集め、乱闘も繰り返された。93年6月8日の北陸シリーズでは、“富山事件”と呼ばれる騒動が起きた。

 5月27日の試合で、大久保博元が高津臣吾から死球を受け、左手首を骨折したことが伏線だった。

 1回表2死、ヤクルトの捕手・古田敦也が打席に立つと、宮本和知、吉原孝介の巨人バッテリーはこれまでの打者とは明らかに攻め方を変え、1、2球目ともに胸元を攻めてきた。

 そして、3球目は右上腕部への死球。「危険球ではないか」と野村克也監督がベンチを飛び出したのを合図に両軍ナインが本塁上に集まり、一触即発の空気が流れたが、乱闘は寸前で回避された。

 だが、間もなく第2ラウンドが勃発する。次打者・広沢克己の左越え二塁打で、古田は、三塁コーチの制止も見ずに、強引に本塁を突く。

 ショート・川相昌弘を中継して吉原に送られたボールが右にそれると、古田はそれた方向に走り、本塁上で吉原に体当たりした。

 吉原は押し倒されながらも、ミットからボールを離さずにブロックすると、倒れた古田の体にのしかかるようにして肘打ちのような強烈なタッチを2度も繰り返した。次打者・ハウエルが食ってかかると、吉原も負けずに応戦し、マウンドから宮本も駆けつける。レフト前にいた川相も、飛び蹴りしながら乱闘の輪に突入。中畑清コーチがハウエルの後方からヘッドロックをかけ、ハドラーに首根っこ掴まれた長嶋茂雄監督が「お前ら暴力団か」と叫ぶシーンも。

次のページ
乱闘再び…