ヤクルトの小川淳司監督 (c)朝日新聞社
ヤクルトの小川淳司監督 (c)朝日新聞社

 9対4でオリックスを下し、34日ぶりに本拠地・神宮球場で白星を挙げたヤクルトの小川淳司監督は、グラウンドを去る前に帽子を取ると、ライトスタンドに向かって頭を下げた。

「ずっと勝てていない現状だったので。(スタンドのファンが)ずっと応援し続けてくれているにもかかわらずなかなか勝てなかったんで、そういう(申し訳ない)思いが……はい」

 5月14日からの大型連敗は交流戦を前に「16」で止めたものの、神宮での試合に限れば、前日まで1引き分けを挟んで11連敗。その黒星の連鎖にようやくピリオドを打ち、スタンドの歓声に帽子を上げて応えるだけでなく、頭を下げたのは、詰めかけた多くのヤクルトファンに対する“謝辞”だった。

「交流戦が始まってまだワンカードですけど、なんとなく連敗中の流れを引きずるというか、そういう部分がまだ残っているように感じます。そこはしっかりと切り替えてやっていかないといけないですね」

 今季交流戦の開幕カードとなった日本ハム戦(札幌ドーム)を1勝2敗で終えて本拠地に戻った小川監督は、オリックスとの3連戦を前にそう話していた。16連敗中からたびたび「流れの悪さ」を口にしてきた指揮官は、これまでにも打順の変更や選手の入れ替え、ローテーションの組み換えなどさまざまな手を打ってきたが、ここでも新たな試みに出る。

 オリックスとの初戦が雨で流れ、一夜明けた6月8日の試合前。神宮での練習風景は、いつもと異なる様相を呈していた。通常、大学野球の開催時や雨天などで神宮が使えない場合は投手、野手共に神宮外苑のコブシ球場および室内練習場で練習するが、神宮が使用可能なら野手はそちらで練習を行い、投手はコブシ球場で練習する。ところが大学野球のないこの日、野手のみならず投手も本球場に集まっていたのである。

 小川監督は「チームとして一体感を出していこうということ」とその意図を説明したが、これはヤクルトにとって異例中の異例。筆者が取材してきた10年間でも、試合前に投手と野手が共に本球場で練習したというのは、2014年9月の一度しかない。これは代々木公園の蚊からデング熱のウイルスが検出されたことを受け、投手陣もやぶ蚊の多いコブシ球場を避けて神宮で練習を行ったため。あくまでも一時的な措置だったが、今後はしばらく神宮での試合前練習が可能なため、小川監督は引き続き投手も野手も本球場で練習を行う方針を示している。

次のページ
グラウンド外でも存在感を示す五十嵐亮太