※週刊朝日ムック「脳と心臓のいい病院2019」より(竹口睦郁)
※週刊朝日ムック「脳と心臓のいい病院2019」より(竹口睦郁)

検査の結果、血液の一部が逆流する症状が認められたことがわかった上皇后・美智子さま(c)朝日新聞社 
検査の結果、血液の一部が逆流する症状が認められたことがわかった上皇后・美智子さま(c)朝日新聞社 

 上皇后さまが宮内庁病院で8日に心臓検査を受けられた結果を宮内庁は10日、発表しました。報道によると、血液の一部が逆流する中等度の三尖(さんせん)弁逆流症と軽度の僧帽弁逆流症などの所見が認められたといいます。現時点で手術の必要はなく、当面は日常生活に過度な負担が生じないよう配慮しながら定期検査を続けるといいます。

 心臓内を血液が正しく流れるために不可欠な四つの弁が、さまざまな理由で機能しなくなるのが心臓弁膜症です。専門医は「四つの弁のうち、発症しやすいのは大動脈弁と僧帽(そうぼう)弁で、三尖弁での閉鎖不全症も高齢者に増えています」と話します。週刊朝日ムック「脳と心臓のいい病院2019」では、心臓弁膜症について川崎医科大学総合医療センター外科部長の杭ノ瀬昌彦医師に取材しており、ここではその一部を紹介します。

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 心臓は、全身に血液を送り出し、全身から戻ってきた血液を肺に送り出すという役割を担っています。この役割のため、左心室・左心房・右心室・右心房の四つの部屋に分かれています。それぞれの部屋の間に、ドアのように働く弁があることで、血液は四つの部屋を一方向に規則正しく流れています。これらの弁が狭くなったり、血液の逆流を生じたりする疾患が、心臓弁膜症です。

 弁が正常に機能しなくなると、心臓に負荷がかかり、血液ポンプとしての機能が低下していきます。軽症~中等症であれば無症状のことも多く、その場合は主に経過観察となります。進行すると、動悸(どうき)やむくみといった心不全の症状、不整脈、さらには、血流に入った細菌が、傷んだ弁に付着することで、心臓の膜や弁が感染症を起こすこともあります。

 こうした症状があらわれたら、治療を検討します。川崎医科大学総合医療センター外科部長の杭ノ瀬昌彦医師は、次のように語ります。

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