「四つの弁のうち、発症しやすいのは大動脈弁と僧帽(そうぼう)弁です。全身に血液を送り出す左側の部屋にあるこの二つの弁は、常に高い血圧にさらされ、負荷がかかりやすいためです」

 大動脈弁と僧帽弁、それぞれで狭窄症と閉鎖不全症を生じます。高齢者に多いといわれているのが大動脈弁狭窄症です。血液を全身へ送り出す左心室の出口である大動脈弁が、動脈硬化によって石灰化して狭くなり、血液を送り出しにくくなります。

 左心房から左心室への出口である僧帽弁で生じる僧帽弁閉鎖不全症も、患者数の多い弁膜症です。僧帽弁が、うまく閉じなくなり、血流の逆流を生じます。僧帽弁を支える腱索(けんさく)という組織が切れたり伸びたりして弁がうまく合わなくなるのが、主な原因です。

 残りの弁のうち、三尖弁での閉鎖不全症も、高齢者に増えています。僧帽弁閉鎖不全症に併発していることが多いのが特徴です。また、心房細動という不整脈の症例に多くみられるともいわれています。右心房から右心室への出口である三尖弁で逆流が起こると、手足にむくみが生じます。むくみを取るために利尿剤が用いられますが、悪化すると心不全に至ってしまうこともあります。

※週刊朝日ムック「脳と心臓のいい病院2019」より