2040年時に予想される水道料金で、料金が低かった10水道事業体を抽出。EY新日本有限責任監査法人・水の安全保障戦略機構事務局「人口減少時代の水道料金 全国推計 推計結果 改訂版」をもとに編集部が作成
2040年時に予想される水道料金で、料金が低かった10水道事業体を抽出。EY新日本有限責任監査法人・水の安全保障戦略機構事務局「人口減少時代の水道料金 全国推計 推計結果 改訂版」をもとに編集部が作成

 福岡県みやこ町の一般的な家庭の1カ月の水道料金は、現在(2015年度)の4370円から2040年には約5倍の2万2239円に激増し、静岡県長泉町は今と同じ1130円──。EY新日本有限責任監査法人と水の安全保障戦略機構事務局が昨年発表した「人口減少時代の水道料金 全国推計 推計結果(改訂版)」には、そんな衝撃的な数字がズラリと並んでいる。

【表】1000円台から2万円超まで! 全国水道料金ランキング(都道府県別)

 日本人にとって蛇口をひねれば出てくることが当たり前だった「水」。それが、20年後には住んでいる地域によって利用料金に大きな格差が生まれる。「水道料金格差時代」のはじまりだ。

 水道料金の値上げが避けられないことには理由がある。明治大学公共政策大学院の田中秀明教授は言う。

「高度経済成長期に整備された水道は老朽化が進んでいて、今後毎年1兆円を超える更新費用がかかると予測されています。さらに、人口減少で水の需要が減り、工場など大口利用者は割安な地下水の利用を増やしています。使用量が減れば、水道事業の収入も減ります。現在でも、全国合計で、他会計から水道事業に年間約2000億円が繰り入れられています。今後は、水道料金の引き上げか税金の繰り入れがさらに増えるでしょう」

 前出の推計データは、現在公表されている統計をもとに、人口減少による収入減や設備の更新費用の増加を水道料金の値上げでまかなった場合などを想定して算出されている。20年後は遠い未来のことではない。

 日本水道協会によると、国内で年間給水量が最も多かったのは1997年の約170億立方メートル。それが2015年には151億立方メートルまで減った。一方で、3~4人世帯の1カ月平均的な水使用量である20立方メートルの価格は、1997年の2926円が20年間で3228円まで増加した。経営が不安定な事業体は、今後は値上げのスピードが加速していく可能性が高い。

「人口が多いから」「水資源が豊かだから」といって、安心できるわけでもない。水道事業は独立採算制で、原則として利用者が払う料金でまかなわれる。同じ都道府県でも、住む地域によって値段に差が出ることが予想されている。たとえば、大阪府茨木市の2040年時の予想水道料金は2044円だが、河南町は1万629円。同じ大阪府内で5倍以上の差がある。

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水道事業の広域化はなぜできない?