5月20日に引退を発表した元巨人の上原浩治 (c)朝日新聞社
5月20日に引退を発表した元巨人の上原浩治 (c)朝日新聞社

 5月20日に引退を発表した元巨人の上原浩治氏(44)が残してきた数々の功績の中で、最も称賛されるべきなのは「100勝100ホールド100セーブ」のトリプル100だろう。これまでメジャーリーグでの達成はただ1人、日本では史上初という大記録だ。

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 ちなみに「ホールド」とは、1986年にアメリカで考案され、日本では1996年にパ・リーグで採用が始まり、2005年にセ・パ両リーグで導入された「中継ぎ投手のチームへの貢献度」を評価する指標だ。現役で活躍する日本人投手の中で、トリプル100に近い数字を残しているのは誰なのだろうか。

【藤川球児(阪神)】日米通算成績:58勝146ホールド226セーブ
【平野佳寿(ダイヤモンドバックス)】日米通算成績:53勝175ホールド160セーブ
【増井浩俊(オリックス)】通算成績:35勝141ホールド159セーブ
【五十嵐亮太(ヤクルト)】日米通算成績:70勝164ホールド70セーブ
※成績は2019年5月27日時点

 トリプル100の3項目のうち、2項目をクリアしているのは藤川、平野、増井の3選手のみだ。1項目クリアの選手は、何人もいたが、五十嵐が最もバランスよく数字を積み上げていた。

 こうしてみてみると、上原氏が達成したトリプル100が、いかに難しい記録なのかが分かる。キーとなるのは勝利数。中継ぎや抑えという役割で、100勝を積み重ねるのは、よほどの技術があったとしても簡単ではない。

 藤川の成績を見てみると、達成にはあと42勝が必要になるが、年齢は今年で39歳。上原氏が引退した44歳までプレーすると仮定したとしても、毎年平均8勝以上は勝たなくてはいけない。平野、増井はともに今年で35歳。平野が47勝、増井は65勝が必要だ。年齢が藤川よりも4歳若く、増井よりも多くの勝利数を稼いでいる平野なら一見クリアできそうな数字にみえるが、平野のプロ生活12年間の1シーズン平均勝利数は4勝だ。藤川のケースと同じく、上原氏が引退した44歳までプレーすると仮定したとしても100勝には届かない。

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上原の驚くべき順応力