「あれれ?」の結末に終わったブーマー (c)朝日新聞社
「あれれ?」の結末に終わったブーマー (c)朝日新聞社

 2019年シーズンが開幕し、毎日贔屓チームの勝敗をチェックする今日この頃だが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、80~90年代の“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「あれれ?の結末編」だ。

 1991年、「テレビじゃ見れない川崎劇場」という野球CMのキャッチコピーが流行語になったが、「珍プレーも見れる川崎劇場」とも言うべきシーンが演じられたのが、89年10月10日のオリックスvsロッテ(川崎)である。

 1回、オリックスは2死から3番・ブーマーが荘勝雄から左越えに大飛球を放った。ホームランダービーで2位・ディアズ(ロッテ)に2本差に迫る37号先制ソロを確信したブーマーは、バンザイのポーズを披露すると、一塁コーチと歓喜の握手をかわし、大はしゃぎ。そして、“会心の当たり”の余韻に浸るかのようにゆっくりとした足取りでダイヤモンドを1周しはじめた。

 ところが、幸せ気分を噛みしめながら一、二塁間を走っているときに、外野からボールが返ってきて、なんと、タッチアウトになってしまった。実は、打球はオーバーフェンスせず、フェンスに当たって跳ね返ってきたので、インプレーだったのだ。普通に走っていれば、二塁打になってもおかしくなかったのに、記録は左越えの単打。しかも、タッチアウトにより、スリーアウトチェンジになってしまった。

 先制のチャンスが、あってはならない勘違いで無得点。こんなときは得てして流れが変わってしまうもの。その裏、先発・山沖之彦がルーキー・初芝清に満塁弾を浴びるなど、一挙6失点で、終わってみれば、4対17の大敗。3日前にマジック6が点灯したオリックスだったが、翌日からまさかの3連敗で3位に転落してしまった……。

 試合後、上田利治監督は「1回がすべてだった」と苦渋の表情。もちろん1回裏の6失点のことを言っているのだろうが、ブーマーのボーンヘッドを指しているように聞こえなくもない?

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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