また、塾通いが始まるとそれまでの習い事をやめさせてしまう家庭も多いのですが、子どもにとって習い事が息抜きになっている場合もあります。もしそうなら、続けさせることで勉強も効率的に進みますし、限られた時間をマネジメントする力もつきます。また、学校以外の人間関係もそこにはあるはずです。

 これらの積み重ねが、自分で考え行動する、受験だけで終わらない子どもを育てる秘訣なのです。

■子どもに話をさせる、ほめることで自信が育つ

 社会に出て活躍するには、個人としての強さ、強い自己を持つことが重要です。それには、集団の一員として自分の役割をきちんと果たし、自らの考えを言葉にし、実行する必要があります。さらに、人とのつながりを大切にし、自分で居場所見つけていくことも大事です。

 ここまで述べてきたように、開成では、それらの力や感性を養うことを目的の一つとした教育方針を取っているので、開成出身者たちは東大をはじめとする難関大学に合格しても、それを人生の一つ通過点と捉え、社会に出るとさらに生き生きと自分を磨いて活躍していきます。

 しかし、開成に行かなくても、このベースとなる力は家庭で充分伸ばすことができます。

 家庭でできることのなかで、一番大事で簡単な秘訣、それは「子どもに話をさせる」ことです。

 本の中でも繰り返し伝えていますが、子どもにはどんどん話をさせ、親は聞き役に徹します。話すことで脳が活性化され、論理立てて考えられるようになり、コミュニケーションの力もついていきます。

 さらに、親がきちんと話を聞いてくれることで、子どもは親から受け入れられている安心感を保つことができ、憶することなく外の世界にもはばたいていきます。

 こうして育った子どもは、人生のどのステージでも自分の居場所を見つけ、自分の特性を生かして活躍できる、「生きる力」を持った子に育つのです。

 東大出身という学歴を手に入れることを目的とするのではなく、その先も「生きる力」を持ちつづけられる人間に成長することが、もっとも大事なことではないでしょうか。(取材・構成/松島恵利子)