志望大学に合格した途端に目標を見失い、何もやる気が起きない……。卒業間近になってもやりたいことが見つけられず、とりあえず大学院に進んだり、就職浪人に……。

 そんな若者が増えている昨今。大学は自立して自力で食べていけるようになるためのステップの一つであり、ゴールではないことを、親子共に再認識することが大切です。

『男の子を伸ばす母親が10歳までにしていること』(朝日新聞出版)の著者で、東大合格者数38年連続日本一の開成中学・高校の柳沢幸雄校長先生に、志望校合格で燃え尽きてしまわない、社会で輝ける場所を見つけられる子どもに育てる方法について聞きました。

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■志望校を卒業後も活躍できる素因は何か

 大学には燃えている学生、冷めている学生、燃え尽きた学生がいます。4年間燃えて自主的に、自律的に学問と大人としての生き方を学び続ければ大きく成長します。私の経験では東大生の2割はこの分類に入ります。5割は冷めている学生で、自主的、自律的な学び方は知っているけれども、情熱に燃えて時間を過ごすことはなく、何となく冷めた4年間を過ごしています。3割は燃え尽きた学生です。中等教育の段階で自主的、自律的な学び方を身に付けることなく、指導されるままの無駄のない受験勉強で過ごしてきた学生たちです。自分流の勉強方法が身についていないので、大学に入学して途方に暮れてしまうのです。

 能動的な学習環境が自主性、自律性を育てるのには必要です。開成の授業では不規則な発言を含めて発言する生徒が多いので、以前他校の先生が授業を見学しに来た時に、思わず「君たち、静かにしなさい!」と怒鳴ってしまったことがあるくらいです。

 なにせ、開成の授業は生徒たちが口々に発言したり声をあげるのが当たり前ですから、「静かに聞くべし」を基本として指導してきた先生にとっては驚きだったのでしょう。

 少し話はそれますが、最近、子どもたちが能動的に学ぶことができるような学習方法、「アクティブラーニング」が注目を集めており、高校や義務教育の中でも取り入れられています。

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勉強だけしていればOKではない