台風21号の影響で関空連絡橋に衝突したタンカー=2018年9月4日(c)朝日新聞社
台風21号の影響で関空連絡橋に衝突したタンカー=2018年9月4日(c)朝日新聞社
空港が孤立してしまい、当時、自動販売機の売り切れが続出した (c)朝日新聞社
空港が孤立してしまい、当時、自動販売機の売り切れが続出した (c)朝日新聞社

 昨年9月に関西地方を襲った台風21号は、関西国際空港に大きなダメージを与えた。空港島と本州を結ぶ連絡橋にはタンカーが激突し、高潮で空港内は浸水。身動きの取れない旅客は空港島で孤立した。その混乱に拍車をかけたのが、空港を運営する会社の機能不全だった。今、災害対応に当たった大人達の様子が詳細に記された記録が“怪文書”として出回っている。文書はKAP幹部の対応にあきれた関係者や外部から協力した人物がまとめたとされる。

【写真】台風21号の被害で孤立し、混乱する空港内の様子

「関空が民営化されて、責任の所在がわからなくなった。だから、有事の時に対応できない。文書は関空の経営を憂う人が書いたと言われているが、フランス人幹部と対立した人たちの合作とも言われている」(KAP関係者)

 文書に記されている驚きの内容を紹介しよう。

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「怪文書」と聞けば、何を思い浮かべるだろうか。政治の世界でライバルを追い落とすために作成された出所不明の文書。政界だけではない。官僚機構や会社組織の内部でも、権力闘争が激化するとどこからともなく生まれ、人知れず右から左へ流れていく。その情報の多くは出所不明で真偽もわからない。だが、すべてがニセモノとは限らない。ごくまれに“良質な”怪文書が出回ることもある。

 ここにA4用紙14枚にまとめられた文書がある。冒頭には、こう書かれている。

<台風発生、その後の報告ミス、情報提供不足による混乱の1日、12時~15時台風通過。3000人孤立の情報、大規模浸水、停電、ネットワーク断絶、ビル損壊など>

 単語の羅列は、昨年9月4日に台風21号の直撃を受けて大混乱に陥った関空の“機能不全”をあらわしている。当時、巨大台風の影響で約7800人の旅客らが空港内で孤立した。一刻も早い脱出と空港機能の回復が急務だったその時、対策にあたるはずの空港運営会社「関空エアポート」(KAP)で起きていたのは、主導権争いをめぐる会社幹部たちの子供じみた言い争いだった。文書には、その様子が日誌の時系列形式で克明に記録されている。

 一例をあげてみよう。

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<9月7日(金) KAP内部分裂が露呈。トップ同士で口喧嘩>

エマヌエル・ムノント副社長「国交省の発表を事前に聞いていない。意図的にバンシへ知らさなかったのではないか」

山谷佳之副社長「直接報告した」

ムノント氏「翻訳が稚拙だった。翻訳チームの不手際だ」

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机を叩いて怒る日本人幹部