第31期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)の第7局が20、21日、山口県下関市で行われ、挑戦者の広瀬章人八段(31)が勝利した。羽生善治竜王(48)は27年ぶりの無冠となった。羽生竜王が不登校の当事者たちに語っていた「不調の乗り越え方」とは? 『不登校新聞』の編集長・石井志昂さんが綴る。
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将棋の羽生善治棋士(48歳)が第31期竜王戦七番勝負で負けたため、27年ぶりの無冠となりました。私も自分のことのように残念でなりません。もう今夜は眠れません。
というのも、不登校の人たちといっしょに羽生さんを取材したことがあるからです。その縁もあって、羽生さんは不登校の子どもたちの学校を訪問。さらには今年、不登校の人のための大会に金沢まで足を運んでくれました。
不登校の人たちが羽生さんを取材したかった理由は一点。羽生さんが学校に拠らない生き方をしてきた人だからです。そういう意味でも憧れの人でした。
取材時、不登校の小学生男子が羽生さんにこう言いました。
「僕は囲碁のほうが好きです」
この一言に現場は凍りつきました。ボウズ、なぜそんな話をするんだ……、と。
しかし羽生さんが笑顔で「あ~、囲碁もおもしろいよね」と返してくれ、その人柄に感謝しました。
そんな事件もありつつ、取材の本題は「学び」です。不登校の人から、自身が学校へ行っていないこと、しかし学校に拠らずとも生きていける自信が少しずつ芽生えてきたことを話しました。そして、不登校の人へのメッセージはないかと尋ねました。羽生さんの回答はこうでした。
<「学校へ行かないことに罪悪感を持たない」ということが大切だと思います。
私は中学生でプロ棋士となり、高校に入学したものの月に10日間くらいは休んでいました。だから、なんとなく学校へ行かない人が感じている違和感とか罪悪感がわかるような気もするんです。
でも本人の気持ちしだいで、いつ始めても、いつやめてもいい、学びとはそういうものなのではないかと思います。加えて言えば「いい学校を出て、いい会社へ」というレールも、いまの社会に本当にあるのかどうかはわかりません。