棋士も基本的に五里霧中のなかで手を選んでいます。五里霧中のなかでの選択するとき、私が心がけているのは向かうべき方向性だけは見失わないこと、先のことは考えすぎずに「今の局面」をきちんと考えていくこと、そんなことを考えながら指しています。>(『不登校新聞』2018年10月1日号より)

 相手の立場に立って、自分の価値観で考えるからまちがえる。それは仕事でも、子育てでも、私がふだん取材している不登校でも共通の訓示だと感じました。

 羽生さんの話は、当たり前のようでいて、いつも見失ってしまうことを指摘してくれます。だからこそ五里霧中のなかで生きている人に響く言葉を持っているのだと思います。

 もう年末も近づいてきました。忙しいときほど「相手」のことを無視しがちなので、羽生さんの復活劇を楽しみにしつつ、日々をすごしていければと思っています。(文/石井志昂)

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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