会計検査院も財務省も官民ファンドは問題だというが、ちょっと意味が違う。
「経産相と次官 給与返納 産業革新投資機構の報酬問題」。
12月4日付朝日新聞夕刊1面記事の見出しだ。大臣と次官が給与返納というのだから、どんな不祥事があったのかと思うだろう。これは、世耕弘成経済産業相の「より大きな責任逃れのために小さな責任をとる」という高度なパフォーマンスなのだが、その点はさておき、この件は、最近よく話題に上る官民ファンドの問題点を象徴的に示す事例だ。
官民ファンドとは、政府と民間が共同出資して、ベンチャーの起業、高度な研究開発、地域経済の振興、日本文化の海外への発信、農林水産業の振興など様々な政策目的のために投資する基金のことだ。安倍政権になって雨後のたけのこのように増殖し、現在は14もの官民ファンドが活動中だ。それぞれが掲げる目的は、一見異なるが、実際には重複している。14のファンドへの、政府の出資や融資は18年3月時点で計8567億円、ファンドが資金調達するうえで政府が元本の返済や利子の支払いを保証した金額は計3兆円近くにもなるそうだが、有望な投資先を見出せず、集めたお金を眠らせていたり、赤字決算になっているケースが多発している。しかも、個別案件の情報開示がほとんどなく、今後どうなるのか非常に不安なファンドばかりだ。
さらに、官民ファンドは、各省庁からの現役出向などの受け皿にもなっているので、役所にちゃんとやれと言っても、簡単には進まない。こうした事態に対して、会計検査院は、使えない資金の返還や情報開示の徹底などを求めているが、はっきり言って、真面目に対応しているファンドはない。
官民ファンドの問題事例はたくさんあるが、いくつか紹介してみよう。
経産省が日本文化の海外輸出支援のために鳴り物入りでスタートさせた「クールジャパン機構(CJ機構)」という官民ファンドの名前は聞いたことがある人も多いだろう。ここは、1910億円の投資計画を策定したものの、実際の投資額は399億円どまりで、しかも、98億円の累積赤字を抱えてしまった。