■2年で異動する官僚にファンドをやらせると…

 ファンドの活動期間は長い。官民ファンドでは、長くなればなるほど、個々の投資案件への評価はあいまいになるのが宿命だ。ファンドを監視しているはずの出向している官僚は1年か2年で元の所属省庁に戻り、後任者は新規案件には熱心でも既に投資された案件にはどうしても無関心になる。結局、あとは野となれ山となれの無責任体制となるのだ。

 過去には、旧郵政省と旧通産省が「基盤技術研究促進センター」という官製ファンドを作り、「民間のプロを集めて」ベンチャー投資をしたが、NTT株の配当金約3000億円を投資して9割以上を失ってしまったという大事件があった。しかし、この大損失の事態にも、官僚は誰も責任を取らずに済んでいる。

 今やファンドのノウハウは民間にも定着し、市場の資金もじゃぶじゃぶだ。それでも金が集まらないベンチャー企業は、はっきり言って、不良案件だけ。それが官民ファンドに群がってくるのが実情だ。

 そもそも、民間ではできないのに、官が出てくればできるというのは、なぜかということを考えてみてほしい。官僚が民間人よりもベンチャー投資の目利きができるはずもない。最新の業界動向、技術動向に通じている訳でもない。では、何が強みなのか。

 それは、国民の税金を好きなように使って、しかも、責任を取らなくてよい。それだけが官民ファンドの強みだ。だから民間なら「やめた方が良い」という事業に投資できる。もちろん、リスクは国民が負っている。

 そう考えると、はっきり言って、官民ファンドは百害あって一利なしだ。本当に公的な目的があり、かつ、民間ビジネスではできないというのなら、補助金を出せばよい。補助金なら、毎年の予算として、厳格なチェックを受ける。それを通るだけの必要性があるものに限って支援すれば済む話だ。官民ファンドの管理強化などは不要。すぐに全廃すべきだ。

■三流案件の吹き溜まりとなる官民ファンドは全廃しかない

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