この機構が投資した個別案件で有名な例としては、三越伊勢丹ホールディングスとの共同出資で2016年10月にオープンした「イセタン・ザ・ジャパン・ストア・クアラルンプール」がある。スタート時には、新聞・テレビでも大きく報じられた。しかし、この案件は、開業から不振続きで、結局、CJ機構は18年6月に株式を売却して撤退した。

 同じくCJ機構が投資したバンダイナムコホールディングスなどが設立したアニメ配信会社アニメコンソーシアムジャパン(ACJ)も大々的に宣伝されたが、失敗して撤退。

 13年設立の農林水産省所管の官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」(A―FIVE)には、政府が300億円を出資したが、18年3月までの投資額はたったの98億円で含み損は10億円。これに対して役職員約50人の人件費を含む運営経費が何と40億円超だというから、開いた口が塞がらない。

 15年設立の総務省所管の「海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)」も、投資実績がたったの4件。昨年3月に話題になったプラスワン・マーケティング(格安スマホ事業)のアジア進出支援を目的にした13億円の出融資は、1年もたたないうちに同社が破綻して、海の藻屑と消えた。

 国土交通省所管の「海外交通・都市開発事業支援機構」も、4179億円と巨額の投資計画に対して、実績はわずか263億円で、しかも、累積赤字は46億円。

 こうした事態に対して、マスコミの批判記事も増えた。各省庁への批判ももちろんだが、政府出資の総元締である財務省への批判も強い。それを恐れたのか、18年11月10日付の日本経済新聞に、財務省が、官民ファンドの管理強化に乗り出すという記事が出た。具体的に何をするのかは不明だが、その趣旨は、せっかくお金があるのだから、もう少しちゃんと投資しろという方向を向いているようだ。官民ファンドの体たらくを見れば、財務省が官民ファンドの経営をテコ入れするのは、確かに当然のことだと思う人もいるだろう。

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官民ファンド赤字は当然