■官民ファンドが赤字になるのは当然

 しかし、投資実績を伸ばすための管理強化なんて全くの愚策だ。なぜなら、管理強化をして、もっとちゃんと投資しろとやったら、どうなるか。投資額は増えるだろうが、官民ファンドの収益はさらに悪化し、赤字幅が際限なく拡大するのは確実だからだ。

 では、一体どうして、官民ファンドの投資は失敗ばかりなのだろうか。

 官民ファンドは、一部民間からの出資を受け入れるが、その他は、国の出資や政府保証付きの債券発行などで資金集めを行う。焦げ付いても最後は国が損失をカバーしてくれるので、多額の資金が簡単に集まる。

 リスクなしで好きなように投資できるとなれば、どうなるか。まず、最初のスタッフのリクルートで問題が起きる。リスクなしで好きなことをできるということに妙味を感じる人が集まることになるからだ。民間の「プロ」と言われて集まったスタッフは、実は、金儲けと売名狙いの輩ばかりということになる可能性が高くなるのだ。

 それを最も端的に表したのが、冒頭の産業革新投資機構(JIC)で起きた今回の騒動だ。18年9月に産業革新機構(INCJ)を延命・改組してスタートした資金量2兆円の巨大官民ファンドだが、そのJICの田中正明社長が、給料を1億円以上寄越せと言い始めた。ファンドかぶれの経産官僚やこれまたベンチャー大好き人間の世耕経産相がこれに賛同して、いったんはJICの幹部などに1億円超の給与を払える制度にすることでJICと経産省が合意した。ところが、この世界のプロの人たちから、いくら何でもあの人たちに1億円はないんじゃないかという批判が集まった。さらに、ゴーン前日産会長事件で、高額報酬問題が世論の注目を集めるという事態に巻き込まれた。最後は、自民党内からも批判が出て、菅義偉官房長官からもダメ出しがあったとかで、ついに経産省は1億円報酬を撤回した。もちろん、田中社長は、話が違うと激怒。経産省は、田中社長に辞任を迫り、さらには、追加出資の大幅減額で脅しをかけているなどとも報じられる。完全な泥仕合だ。

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派手でずさんな投資がまかり通る仕組み