写真は文章に合わせて選ぶものだ。なのに、この写真に合わせて書けとは、君も偉くなったな――。如才ない対応に、つい心の中で突っ込んだ。

 後輩といえば、お見舞いにきた元総理番と元総局員から「白目が怖かった」と言われたことがある。

 私が机に向かって着席している。斜め後ろから後輩に呼びかけられ、ゆっくりと振り返る。そんな時、しかられそうな事情を抱えた相手には、「白目」に見えたらしい。

 後輩については「嫌われる必要はない。しかし、嫌われないことを目標にしてはいけない」と心がけてきた。

 お見舞いには、その「答え合わせ」のようなところがある。

 久しぶりに顔を合わせる。「あのころ、こんな大変なことがあった」と思い出を一緒に振り返り、「今こんな課題を抱えている」という相手の話に耳を傾ける。変わっていないな、という懐かしさを覚えるいっぽう、当時と今で、相手が「苦労」と感じるレベルが上がっていることに気づく。

「白目」にも多少の意味があったのかもしれない。そう感じるのは、こんな時である。

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野上祐

野上祐

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

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