一方、この安倍政権の作戦である、「押し付け」+「長期間改正なしで古い」=「改正が必要」という論法は、憲法だけにしか当てはまらないというわけではない。実は、それと全く同じ論法が通用する国政の大問題がある。

 それは、日米地位協定だ。この協定は、憲法より歴史が浅いが、1960年にアメリカに「押し付けられ」て成立し、それから60年近くの長期にわたり、「改定されていない古い」協定である。当時は、沖縄はまだ本土復帰を果たしておらず、事実上米国の植民地だったが、今日、その状況は激変している。

 憲法9条改正について、安倍総理は、現に存在する自衛隊を憲法に書きこむだけだから、改正しても何も変わらないと言っている。何も変わらないなら、改正の優先度は低いはずだ。

 地位協定はどうか。これまで繰り返し指摘されているとおり、これにより、基地周辺の人々をはじめ多くの国民が被害を被っている。改定すれば、それを大幅に軽減できる可能性がある。ならば、こちらの方が優先度は高い。一日も早く「変えるべきだ」となるはずだ。

 今回は、基地周辺住民の被害を中心に語られてきた日米地位協定について、少し視点を変えて、実は、安倍政権の看板政策「アベノミクス」にとっても、大きな足かせとなっているという観点から、一日も早く地位協定を改定すべきだということを論じてみたい。

■観光立国日本でインバウンド消費8兆円の夢

 初めに、地位協定とアベノミクスがどう関係するのか、簡単に解説しよう。

 東京五輪に向けて、政府は東京都心上空を飛行して羽田空港に発着する国際線向け新ルートを検討してきた。

 羽田空港は、成田空港との棲み分け問題もあり、国際線には十分なルートが確保されていなかった。国交省によると、海上から着陸する従来ルートでは滑走路の使用が制限され、1時間の発着数は約80回が限界。今もフル稼働の状態だ。新ルートが実現すれば1時間90回に増発でき、昼間時間帯の国際便の発着数を年間約6万回から最大約9万9千回に増やせる計算になるという(日経新聞報道)。

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