これは、日本政府にとって、非常に大きな意味がある。その新ルートを活用して東京オリンピック・パラリンピックのために来日する外国人観光客を円滑に受け入れることができるからだ。また、「観光立国日本」を掲げた政府の目標では、2020年に訪日外国人数4000万人、インバウンド消費額8兆円実現という青写真を描いているが、そのためにも羽田の国際線発着枠拡大は急がなければならない。

■独立国なのに首都上空の管制権がない

 ところが、その新ルートが在日米軍の管轄する「横田空域」の一部を横切るルートであるため、アメリカ側が「米軍の運用上支障が出る」という理由でその利用を拒否しているために、発着枠拡大の実現に黄信号が灯っているのだ。

 横田空域、あるいは、「横田ラプコン」という言葉を一度は聞いたことがある人が多いだろう。横田空域というから、米軍横田基地(東京都福生市など)の上の空域のことだと思いがちだが、実は、そんな狭いエリアではない。実際には1都9県(東京、神奈川、埼玉、群馬、栃木、静岡、長野、山梨、新潟、福島)にまたがり、しかも、最大高度7000メートルに及ぶ巨大な空域だ。この横田空域が、アメリカ空軍の完全管制下にあるため、日本は独立国でありながら、首都圏上空という自国の心臓部の飛行ルートを自由に使うことが許されていない。

 今日でも民間の飛行機は、この空域を米軍の許可なく飛べないため、羽田から西に向かう飛行機は、いったん千葉の方に出て、そこから大きく南に迂回したり、北陸方面に向かう場合は、千葉の方に出てから、急旋回しながら高度5000メートル以上に急上昇してこの空域を避けて飛んでいる。そのための燃料費と時間を考えれば、壮大な無駄を強いられているわけだ。

 こんなバカな話はない。いくら安全保障をアメリカに頼っているとはいえ、これではまるで植民地ではないか? と、誰もが思うだろう。

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敗戦国だから仕方ない?