■敗戦国だから仕方ない?

 この不条理をもたらしているのが、1960年に結ばれた日米地位協定だ。ふつうの独立国なら過度に主権が侵害されているとして、アメリカと交渉し、協定の改訂に乗り出すものだが、第2次世界大戦の敗戦国だから仕方ないと、諦めてきたのが歴代自民党内閣だった。

 しかし、同じ敗戦国でありながら、日本同様、米軍基地を受け入れているドイツ、イタリアはもっと毅然としている。米国に地位協定の改定を働きかけ、難しい交渉の結果、大きな改定を勝ち取った。例えば、国内での米軍訓練にはドイツ、イタリア政府の同意(承認)が必要だし、日本のように在留米軍に国内法が適用されないということもなくなった。基本的に自分の国の空は、自分たちで管制権を持ち、米軍といえども、自国の法律に従ってもらうという内容に変えたのだ。

 これらの例を見てわかるとおり、本気で交渉すれば、横田空域の管制権を日本に取り戻すことは可能なはずだ。

 こうした考え方に対しては、日本はアメリカに守ってもらうのに、日本はアメリカを守らないんだから大きなことは言えないという反論もあった。しかし、安倍政権は、自ら何の見返りもなく、集団的自衛権行使を認めるという事実上の憲法改正までして、アメリカに媚を売った。当然、その見返りに地位協定改定を働きかけても良いはずだが、安倍総理にはそんな姿勢は全く見えない。

 もちろん、アメリカに米軍管制権の返還を求め、地位協定の不平等性を訴えて、根本から改定しようということをいきなり20年までにやれと言っても難しいかもしれない。しかし、読売新聞によれば、今回の飛行ルートで横田空域を横切るのは、わずか数分という短時間だそうだ。それくらいの例外も認められないという米側の姿勢は、おそらく、どうせ、安倍総理は強くは言ってこないだろうという読みがあるからだ。

■日米安保と日米地位協定が日本の足かせになる

 この問題は、安全保障とか「主権」だけの問題ではない。横田空域の占領というアメリカによる主権侵害が、日本の成長の足かせになっているということをあらためて認識する必要がある。日本にとって、大きな「損失」になっているのだ。

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大きな「損失」となる理由とは?