日本一を喜ぶソフトバンクの選手の前で判定に抗議する阪神の和田監督(当時) (c)朝日新聞社
日本一を喜ぶソフトバンクの選手の前で判定に抗議する阪神の和田監督(当時) (c)朝日新聞社

 長いシーズンを締めくくるプロ野球の日本シリーズが開幕し、今年もどんな名勝負が繰り広げられるのか非常に楽しみである。そこで今回は、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、過去の日本シリーズで起きた“B級ニュース”を振り返ってもらった。

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 濃霧でボールが見えなくなったため、7回途中でゲーム打ち切りの珍事となったのが、2005年の阪神vsロッテ第1戦(千葉マリン)。

 5対1とリードしたロッテは、7回にも里崎智也の3ランで8対1とリードを広げたが、試合中盤から立ちこめてきた霧が、このころには、球場全体を白一色に覆っていた。

 なおも1死一塁で、ベニーが橋本健太郎の初球をとらえた瞬間、実況アナは叫んだ。「あっ、これは白い靄で見えないんだが、どうか?入ったか?入った!お客さんはまだ気づいていませんが、入りました!」。

 “白いベール”のなか、ベニーがゆっくりダイヤモンドを一周する姿を見た右翼席のロッテファンは、初めてホームランだと気づき、歓喜のウエーブ。ライトの桧山進次郎も「(霧は)気になったよ。ベニーの(右越え)本塁打はまったく見えなかった」と証言した。

 直後、外野線審から「球が見えない」とアピールがあり、午後8時31分から試合中断。しかし、2時間待っても回復しないことがわかり、史上初の濃霧コールドゲームが成立した。

 なぜ、こんなことが起きたのか?実は、海沿いの同球場は、夜間の冷え込みで年間10日前後霧が発生する。例年なら試合のない10月下旬にナイターを開催したことが思いもよらぬアクシデントをもたらしたのだ。

 プレーオフの結果待ちで実戦から半月遠ざかっていた阪神はこの日わずか5安打。岡田彰布監督は「打者は1本出たら違ってくる。最後まで試合をやって、もう1回打席に立たせてやりたかった。すっきりせん終わり方やけど、しゃあない」と残念がったが、その不安が的中。ストレートで4連敗を喫してしまった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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大記録のかかった最終回にまさかの交代