また、現在は現役を退いているが日本でも有名なアンドレ・アガシは1991年の全米オープンで審判に対し、“卑猥”な暴言とつばを吐きたほか、マルコス・バグダティスは2012年の全豪オープンで怒りのあまり4度もテニスラケットを破壊し、試合後に1250ドルの罰金を支払わされている。

 ここで挙げた事例には、ラモス審判が多く登場するのは気になるが、それ以上に注目したいのは、こうしたほとんどの事例が減点の対象にはなっていないという点だ。元男子選手のジェームズ・ブレークは「過去にもっと悪い発言をしたが罰則はなく、軽い注意を受けた程度だった」とツイッター上で発言すれば、アンディ・ロディックも「残念だが、私もより酷い発言をしてしまった。だがゲームペナルティなどを受けたことは一度もない」と過去の暴言は見過ごされてきたことをツイッター上で告白している。

 セリーナ・ウィリアムズを擁護する人物は、テニス界だけにはとどまらず、バスケット界のスーパースター、ステフィン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ)も「セリーナは、あの状況で一流の振る舞いを見せたと思う」と発言したことを『Yahoo! Sports』が伝えている。カリーはその一方で、「全ての人にナオミを祝福してほしいと願っているんだ。なぜなら彼女こそ全米チャンピオンで、最高のパフォーマンスをみせたから」と、勝利した大坂により大きな注目が集まることを願っていた。

 セリーナ・ウィリアムズの決勝での振る舞いに対しては日本でも批判的な報道が目立つが、男子選手にもこうした言動があったにもかかわらず、彼女が科されたほどの重い処分を受けていない。今後はコート上でのまずい言動は公平に処罰され、大舞台で戦う選手やそれを見守るファンたちが後味の悪い思いをすることがないことを願いたい。