黒衣になった芥川賞作家が見た歌舞伎の裏側 印象深かった梨園の妻の存在感とは? (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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黒衣になった芥川賞作家が見た歌舞伎の裏側 印象深かった梨園の妻の存在感とは?

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木元健二dot.#朝日新聞出版の本#読書
吉田修一さんと中村鴈治郎さん

吉田修一さんと中村鴈治郎さん

 鴈治郎さんの公演で各地に赴いた。東京・歌舞伎座、大阪・松竹座といった大都市のほか、城崎温泉に近い出石永楽館(兵庫県豊岡市)は趣のある芝居小屋だった。「永楽館と宿舎を結ぶ小さなバスに乗っていいよ、と言われ、役者のみなさんが疲れているのにやっぱり芝居の話をしていて、冗談を言って笑いあっている姿も見せてもらいました」

 旧金毘羅大芝居(金丸座、香川県琴平町)も忘れられない。現存する日本最古の芝居小屋で、訪れる客の目も肥えている。鴈治郎さんの襲名披露があったときで、夜、飲みに出る鴈治郎さんに、奥さんが「襲名ですからね」とやんわり釘を刺す様子が印象深い。「こうやっていつも心配されているから役者は役者でいられるんだなぁと(笑)」

 結果、歌舞伎のかかる劇場には、すべて足を運ぶことになった。連載はすでに終わっているが、この夏も福岡・博多座で黒衣になっている。そんな吉田さんに「こんなに芝居が好きな弟子がいればいいのに、と思いますよ」と鴈治郎さんは目を細める。

「連載が終わった今、黒衣になっても、ちょっと遠慮してしまうんです。書いているときはがんがんいけたんですが」と明かす吉田さん。恐れを超えて取材していたから豊穣な物語を紡げたのだろう。「黒衣をするうちに歌舞伎がますます好きになり、恐れも何も分からなくなったのかもしれません」

 黒衣となって、他のお弟子さんたちとともに劇場を走り回った成果は、作家生活20周年記念の長編小説『国宝』にすべて注ぎ込まれている。(朝日新聞社文化くらし報道部 木元健二)


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