1994年の創刊から一貫して、偏差値だけにとらわれない多様な大学の価値を伝えてきた『大学ランキング』。最新版の『大学ランキング2019』では、全国770の大学を対象に教育や研究、入試など86項目を調査した。そのなかの【女子学生ランキング】では、女子の総数や学部別の女子の比率を紹介。男子学生が多いイメージである「工、理工学部」部門で、武蔵野大学工学部が女子学生比率全国1位(35.9%)という結果になった。なぜ同学部に“リケジョ”が多いのか、そして来春開設予定のデータサイエンス学部についても取材した。
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武蔵野大は1924年に創立された武蔵野女子学院が前身で、65年に大学を設立、2004年に男女共学化するまでの80年間は女子校だった。女子大としては文学部、現代社会学部、人間関係学部の3学部を有し、共学化のタイミングで薬学部、06年に看護学部、11年に教育学部と次々に学部を新設。18年現在は9学部を抱える総合大学として、8743人(女子5199人、男子3544人)の学生たちがベイエリアの有明キャンパス(東京都江東区)、そして緑豊かな武蔵野キャンパス(同西東京市)で学んでいる。
武蔵野大工学部にリケジョが多いのは、女子大だったから――。それが大きな理由であることは間違いないだろう。
だが、工学部の歴史はまだ浅い。女子大時代の1999年に文学部から人間関係学部が生まれ、共学化後の2009年に一部を環境学部へ改組、さらに15年に再改組して誕生したのが工学部だ。構成される学科は「環境システム」「数理工」「建築デザイン」で、機械や電気などの比較的ハードな工学分野はカバーしていない。ソフトでクリエーティブな学びを習得できる点も女子学生が多く集まる要因かもしれない。
武蔵野キャンパスで、工学部長の風袋(ふうたい)宏幸教授に話を聞いた。
「学部名は工学部ですが、文理融合の学びを重視しています。身につけた専門知識や技能を社会でどう生かすかを考え、創造力と実践力を伴った人材がますます求められていくでしょう」
工学部のなかでも建築デザイン学科の女子学生比率が一番高く、過半数を超える。
「住宅メーカーでの設計や商業施設の空間デザインなど、しなやかな感性をもった女性が活躍しやすい職種が増え、環境が整ってきたことが背景にあります」(風袋教授)
ちなみに、全国に77ある女子大のなかに工学部や理工学部は存在しない。だが、兵庫県の武庫川女子大生活環境学部には建築学科がある。同大のウェブサイトでは16年度卒業生の92%が建築系企業に、89%が建築技術者として就職したと公表している。やはり、設計やデザイン分野は女性が活躍できるようだ。
武蔵野大の建築デザイン学科にはゼミとは別に「プロジェクト」と呼ばれる実践的なカリキュラムがある。1~4年生が学年を超えて作品づくりや研究に取り組み社会にアピールする活動だ。グループワークを通じて想像力や表現力が磨かれ、課題発見や解決への行動力も身についていくという。制作物について風袋教授が解説してくれた。