夏の甲子園、大逆転はなぜ起こった? 光った采配、疑問が残った采配【西尾典文】 (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

夏の甲子園、大逆転はなぜ起こった? 光った采配、疑問が残った采配【西尾典文】

このエントリーをはてなブックマークに追加
西尾典文dot.
済美対星稜の死闘は、逆転サヨナラ満塁弾で決着がついた (c)朝日新聞社

済美対星稜の死闘は、逆転サヨナラ満塁弾で決着がついた (c)朝日新聞社

 まずは1番打者に栃木大会ではベンチ外だった1年生の横山陽樹を抜擢したのだ。1回表の攻撃、その起用がいきなり当たることとなる。横山は大阪桐蔭先発の柿木蓮の初球ストレートを見事にとらえてレフト前へクリーンヒットを放ったのだ。後続が倒れて得点はならなかったものの初回からチャンスを作ったことで、球場全体にもやはり作新学院は侮れないという空気が漂った。

 もうひとつの大胆な采配は、2回に先制点を許したエースの高山陽成をこの回限りで諦め、3回からサウスポーの佐取達也をマウンドへ送ったことだ。実は、栃木大会の決勝でも不調の高山を1回で諦め、2番手に登板した林勇成が好投して優勝を勝ち取っている。そして、この試合でも大胆な継投がはまり、佐取は大阪桐蔭打線を3回から7回までわずか2安打に抑え込み、1点差のまま終盤にもつれ込んだのだ。1点を追う8回表に得点を取りにいくために佐取に代打を送り、その裏にリリーフした3番手の林が打たれて最終的には1対3で敗れたが、王者を相手に最後まで攻めの姿勢を崩さずに戦った作新学院ナインに大観衆からは惜しみない拍手が送られた。

 逆に、これまでで痛恨と呼べる采配は星稜の2回戦での継投だろう。序盤から星陵の強力打線が済美に襲いかかり、7回終了時点で7点差の大量リード。エースの奥川恭伸が脚に異常を訴えて4回で降板したのは誤算だったが、後を受けた2人の投手も安定しており、このまま、星稜が逃げ切るかと思われた。ところが、8回にそれまでライトを守っていた竹谷理央がマウンドに上がると、試合展開は急変する。2つの死球と4安打を集中されて瞬く間に3点差とされると、そこから急遽マウンドに上がった寺西成騎も済美の勢いを止められずにタイムリーと逆転スリーランを浴び、結局この回8失点で大逆転を喫したのだ。その後、星稜は9回表に2点差を追いつく意地を見せたものの、延長13回タイブレークの末、11対13で敗れた。

 星稜は地方大会から何度も継投で勝ち進んでおり、竹谷も選抜では背番号1を背負っていた力のある投手だが、この夏はライトからマウンドに上がったことは一度もなかった。この猛暑の中で、野手としてプレーしていながら投手の準備もすることはかなり負担が大きく、この日の竹谷は交代直後から明らかに本調子とは程遠いピッチングだった。点差が開いたことで竹谷もマウンドを経験させておこうという思惑があったかは分からないが、結果としてこの継投が命取りになったことは間違いない。



トップにもどる dot.オリジナル記事一覧

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい