一方で、勝ちながらも疑問に感じる采配もあった。それが高岡商の1回戦、佐賀商との試合での継投だ。試合は序盤から高岡商の山田龍聖、佐賀商の木村颯太、両エースの投げ合いとなったが、5回に高岡商が1点を先制して終盤に入る。山田に異変が起きたのは6回表だった。ベースカバーに走った際に足がつり、満塁のピンチを凌いだものの、スピードも制球も明らかに落ちていたのだ。しかし、高岡商ベンチはその裏の山田の打順でも代打を送らず、7回も続投を判断し暴投で1点を失い同点に追いつかれた。最終的にはその裏に3点を勝ち越し、8回と9回はリリーフの大島嵩輝が佐賀商打線を0点に抑えて逃げ切ったが、富山大会でも大島が山田を上回るイニングを任せられていることを考えると継投のタイミングは遅い印象を受けた。

 監督の采配、継投のタイミングなどについては結果論であることは間違いないが、特に高校野球の場合はそこに明確な意思が感じられるかどうかが重要ではないだろうか。また一方で、監督の起用ミスを取り返すような選手のプレーが見られるのも甲子園大会の醍醐味である。第100回の記念大会も後半戦に入ったが、大観衆を唸らすような采配、選手の覚醒が数多く見られることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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