大阪桐蔭・根尾昂 (c)朝日新聞社
大阪桐蔭・根尾昂 (c)朝日新聞社

 いよいよ56の代表校が出そろった第100回全国高校野球選手権記念大会。最大の注目は史上初となる2度目の春夏連覇を目指す大阪桐蔭(北大阪)だ。ドラフト1位指名が有力視されている藤原恭大、根尾昂以外にもタレントが揃い、北大阪大会の決勝では23対2の大差で勝利した。全出場校の中でも総合力が頭一つ抜けていることは間違いない。しかし、全国の地方大会を勝ち抜いてきたチームも虎視眈々と頂点を狙っている。打倒大阪桐蔭を果たす可能性が高いチームはどこなのか、ここまでの戦いぶりと戦力を見ながら探ってみたい。

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 まず対抗の一番手に挙げられるのは選抜準優勝の智弁和歌山(和歌山)になるだろう。新チームになってから昨年秋の近畿大会、今年の選抜、春の近畿大会と全て大阪桐蔭に敗れているが、いずれも終盤までもつれる接戦となっている。智弁和歌山の最大の武器は強力打線だ。和歌山大会でも5試合で60点をたたき出している。だが、大阪桐蔭を相手には過去3試合で3得点と打線が沈黙。全体的にバットのアクションが大きく、反動をつけて打つ選手が多いため根尾や柿木蓮のレベルのスピードと変化球には対応しきれていないように見える。しかし、夏は暑さとの戦いで投手も疲労するため、ボールの質が落ちてくれば、智弁和歌山打線が火を噴く可能性は十分に考えられる。大阪桐蔭を倒すためには、序盤では当たらずに、投手に疲れの出てくる準決勝、決勝で打撃戦に持ち込むというのが理想的な展開と言えるだろう。

 近年、大阪桐蔭と覇権を分け合っている関東勢だが、今年の代表校の中では木更津総合(東千葉)を一番手に推したい。新チーム発足当初は、一昨年の早川隆久(現早稲田大)、昨年の山下輝(現法政大)のような絶対的なエースが不在で苦しんだが、背番号5を背負う中軸の野尻光輝が投手としても主戦に成長。ストレートは140キロを超え、丁寧に低めを突くピッチングの安定感は申し分ない。150キロ近いスピードを誇る2年生の根本太一、1年生ながらマウンド度胸抜群の篠木健太郎といった下級生二人も春から大きく成長しており、決勝戦以外は全て継投で勝ち上がるなど投手陣の層は一気に厚くなった。打線も昨年から中軸を打つ野尻、山中稜真を中心に切れ目がなく、投打のバランスの良さは全出場校の中でも指折りである。昨年夏の甲子園では土壇場で日本航空石川(石川)に逆転負けを喫したが、その悔しさを知るメンバーが残っていることもプラス材料だ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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