しかしながら、こうした副作用を考慮しても、ピルを内服して得られる避妊以外の効果があるのです。

 第一に、月経周期が規則正しくなります。ピルは21日間内服し7日間休薬することで、月経周期を28日周期にするため、月経不順は解消されることになります。

 第二に、月経前症候群(PMS)の症状が軽くなります。PMSは、「月経前の3~10日間続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ない消退するもの」と定義されており、イライラや頭痛、腹痛や腰痛や眠気、倦怠感、乳房の圧痛や四肢のむくみといった症状が出現します。頻度は全女性の50〜80%、症状は200〜300のあると報告されており、女性ホルモンのバランスの変化が、PMSを発生させる原因の一つだと考えられています。低用量ピルを内服することで、常に女性ホルモンのバランスを一定に保つことができるため、PMSの治療薬として効果を発揮してくれるのです。

 第三に、月経痛や月経量を軽減してくれます。月経中に増殖する子宮内膜には、子宮の収縮を促すプロスタグランジンという物質が含まれており、このプロスタグランジンの分泌過剰によって子宮収縮の増強をもたらすために、痛みを引き起こしてしまうのです。低用量ピルを内服すると、子宮内膜の増殖が抑えられるため、プロスタグランジンの量は減少し、月経痛が改善され、月経量も少なくなるというメカニズムです。

 避妊の目的だけでなく、月経困難症や子宮内膜症に対する有効な治療薬として、その使用頻度が増加している低用量ピル。それにも関わらず、日本において服用率が低いのはどうしてなのでしょうか。

 1つ目の理由として、承認が遅かったことが考えられます。低用量ピルが日本で承認されたのは、1999年。米国での承認から25年も経過していました。なんと、国連加盟国の中では日本の承認が最も遅かったのです。

 2つ目の理由として、医師による処方が必要であることが挙げられます。低用量ピルをドラッグストアで購入できる国が多い中、日本では医師が処方しなければ、低用量ピルを手に入れることはできないのが現状です。

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