3つ目の理由として、避妊目的で低用量ピルを内服する場合、保険適応外であることが挙げられます。保険適応ではないため、費用は自己負担となってしまうのです。ただし、子宮内膜症に伴う月経困難症と機能性月経困難症の治療目的であれば、低用量ピルの一部は保険適応になっています。

 近年、女性の社会進出が進んでいます。女性の社会進出をいかに支援するか。労働人口の減少が進んでいる我が国が抱える喫緊の課題だと思います。

 2年前のリオオリンピックのことです。女子競泳選手の400メートル個人メドレーに出場した選手は、試合後に倒れ込んでしまいました。そんな彼女は、試合後のインタビューでこう述べました。「昨日、月経が始まりすごく疲れていた。でも、それは理由にならない。今日の自分の泳ぎが良くなかった」と。

 競技のコーチの多くが男性であるがゆえ、「月経中だ」と言えない女性選手は少なくないと聞きます。アスリートでなくても、私含め、多くの女性にとってそのような環境の中で働いているのが現状だと思います。なので、公の場での彼女のこの発言は、とても印象的でした。

 低用量ピルを内服し、月経をコントロールすることで、体調管理している女性が徐々に増えてはきているものの、まだまだ理解が追いついていないのが現状です。低用量ピルや月経に対する正しい理解が広まることを切に願っています。

◯山本佳奈(やまもと・かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー、CLIMアドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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