セネガル戦で同点ゴールを決めた本田 (c)朝日新聞社
セネガル戦で同点ゴールを決めた本田 (c)朝日新聞社
本田が推薦した『負債論 貨幣と暴力の5000年』(以文社)(本田圭佑の公式ツイッターより)
本田が推薦した『負債論 貨幣と暴力の5000年』(以文社)(本田圭佑の公式ツイッターより)

 サッカー・ワールドカップで強豪・コロンビアを撃破し、アフリカの雄・セネガルには二度にわたってリードを許しながらも本田圭佑の同点ゴールで引き分けに持ち込んだ日本代表。監督解任のゴタゴタなどから大会前の期待はイマイチだったが、「持っている男・本田」の復活で日本中が大きな盛り上がりを見せている。

【写真】本田が投稿した『負債論』を推薦したツイッター

 初戦を飾った19日のコロンビア戦の翌日には、日経平均株価が上昇。上げ幅は一時、300円を超えた。すでに関連グッズは一部品薄になっていて、パブリックビューイングやスポーツバーでは予約の電話が相次いでいるという。書店では、W杯を特集した雑誌や選手の著書などが集められた特設コーナーも設けられている。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「予選リーグ突破で、ベスト16入りをした2010年南アフリカ大会と同じ215億円の経済効果が見込める」と指摘している。

 そのなかで、異例の注目を集めているのが本田が推薦した一冊の思想書だ。本田は5月2日、ツイッターで<最近読んだお気に入りの本。シェアしたいと思ったくらいなので是非>と写真付きの投稿をした。そこに写っていたのは、米国の人類学者であるデヴィッド・グレーバーの著書『負債論 貨幣と暴力の5000年』(以文社)。848ページの大著で、価格はなんと6480円。本田は読書家として知られているが、専門家でも読み応えのある学術書を推薦したことに、本田の投稿は1300回以上リツイートされた。

 約40万人のフォロワーを持つ本田の影響は大きかった。投稿後には、アマゾンで本が売り切れに。出版元である以文社の編集者は「専門書なので初版は3000部の発行でしたが、今月、2度目の重版ができました。今も堅調な売れ行きです」と喜ぶ。

 気になる本の内容はどのようなものなのか。デヴィッド・グレーバーは1961年に生まれ、現在はイギリスの名門大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで人類学の教授を務めている。アナキストの活動家としても知られ、「われわれは99パーセントだ」のスローガンを作り、ウォールストリート占拠運動の理論的支柱の一人でもある。

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過激な思想書『負債論』の内容とは