■臨機応変さが柴崎の強みだ

 スタンドから観ていた筆者は、柴崎のそうしたプレー選択があくまで戦術的な効果を意識したポジティブなものだと思っていた。確かにカリドゥ・クリバリとサリフ・サネの大型センターバックコンビ、さらに左右のサイドバックのユスフ・サバリとワゲは前には強いが、背後のボールにばたつく傾向があることから、そこを積極的に狙っていけばチャンスになりやすい。そのイメージは柴崎も持っていた一方で、本来はもっとつなげるところでつなげず、ある意味ロングボールに逃げたところもあるというのは意外だった。

 柴崎はポゼッションならポゼッション、カウンターならカウンターといった1つのスタイルにこだわるタイプのMFではない。試合前に一応のイメージはするものの、いざ試合に入ったらピッチの中で相手の動きや流れはもちろん、空気も感じ取りながらゲームをコントロールしていくのが持ち味であり、セネガル戦のようなプレーを何ら躊躇なく実行することができる。

 そうした臨機応変さは柴崎の強みであり、4年前の屈辱を経験していないにもかかわらず、ワールドカップの舞台で落ち着いてチームをコントロールできている。ただし、ボールをつなげないからロングボールを選択するのではなく、つなげるけどロングボールを出したほうが有効だからそういう選択をしたとなれば、柴崎の理想像に近づくと言えるかもしれない。

「周りの選手とか評価する人がどう思うかはわからないですけど、自分の中では全く納得いくことはないですし、さらにできたというか、自分に対してもっともっとよくしていきたい」

 そう語る柴崎はディフェンスについても「相手をリスペクトしてしまった」と振り返り、必要以上に距離をとって守ったところから前を向いてスピードに乗られたことなどを反省する。2失点目につながった対応のところは、サイドバックとセンターバックの間に生じたハーフスペースを相手に突かれそうになったときにカバーしたが、そこで止めきることができなかった。

「守備の部分は相手に後手を踏んでしまった部分があったかなと。2失点目もそうですけど、相手のスピードやフィジカル的な能力をリスペクトしすぎたというか、警戒しすぎて距離空けて前を向かせてしまったので、そこは自分自身の反省点。ああいった身体能力の相手に対してもさらに対応していきたい」

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世間の評価はうなぎ登りだが…