充実感と期待を持って全仏オープンに臨む錦織 (c)朝日新聞社
充実感と期待を持って全仏オープンに臨む錦織 (c)朝日新聞社

 錦織圭が手首を痛め、コートを去った昨年の8月上旬から約9ヶ月が経った、今現在――。トップ10の顔ぶれはあの頃から、当時9位だった錦織を含め、半数にあたる5人が入れ替わった。

「凄く変わっていると思います。今はまたトップ10に違う顔が多いし、去年や一昨年から顔ぶれが変わっている。色んな選手のケガがあり必然的なところもありますが、層が厚くなっているのは、例年に増して感じます」。

 目に映る今の景色を、錦織はそう語る。錦織の前に立ちはだかってきたアンディ・マリーやノバク・ジョコビッチ、スタン・ワウリンカらは、錦織と同時期にケガで戦線を離れた。ライバルとして鎬を削ってきたミロシュ・ラオニッチも、慢性的な負傷に悩まされランキングを大きく落としている。トップ10から脱落した選手たちのいずれもが、かつて居た場所に戻るべく険しい道に身を置くさなか。それら5人の選手のうち、現在最も高いランキングにつけているのが、21位の錦織だ。

「試合数もこなせましたし、特にモンテカルロで決勝まで行き、トップ10の選手何人かにも良い試合で勝てたのが自信になりました。バロセロナやローマではもっと勝ちたかったが、ノバク(・ジョコビッチ)に負けた試合も良い経験。良い形でフレンチオープンに入れると思います」。

 5月27日に開幕する全仏オープンに挑む心境を、錦織は力強く口にした。グランドスラムの出場は昨年のウィンブルドン以来であり、5セットマッチも復帰後初。その点については「5セットが続いたら、手首がもってくれるのかという心配はある」と認めるも、同時に「久しぶりにグランドスラムの場所で戦えるのが楽しみ」と、胸に沸き立つ高揚感も覚えている。大会のドローは24日に決まったが、錦織はいつもそうであるように、先々を見ることはない。それどころかドロー確定から半日経っても、初戦の相手すら認識していなかったようだ。

「一試合ずつ。出だしで良い試合ができれば、より良いテニスが出てくると思うので。2週目には行きたいですね」。

 ランキングはあくまで一つの指標であり、対戦した時の勝敗を約束するものではない。制御外の事象に心を砕くことなく、自分ができることのみに集中する――それが、錦織の流儀である。

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チームは充実感と期待に包まれている