岸和田城を訪れた、「カーネーション」出演当時の尾野真千子さん (c)朝日新聞社
岸和田城を訪れた、「カーネーション」出演当時の尾野真千子さん (c)朝日新聞社

 好視聴率が続くNHKの連続テレビ小説「半分、青い。」(主演・永野芽郁)は、通称、朝ドラの98作品目となる。『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)を上梓した矢部万紀子氏がそのベスト5を解説する。

【写真】次期朝ドラ「まんぷく」のヒロインはこの人!

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 NHKが毎朝8時から放送しているドラマ。通称、朝ドラ。これを2010年から、連続して見続けている。きっかけは2010年、放送開始時間が15分早まり、午前8時になったことだった。民放の午前8時からのワイドショーに押され、朝ドラは視聴率が下がる一方だったから、時間変更が話題になった。なので、8時スタート「ゲゲゲの女房」を見てみた。何ということでしょう、向井理が出ているではありませんか。

 以来、欠かさず見ている。素敵な俳優ゆえ、ではない。朝ドラが「おてんばの一代記」だからだ。おてんば=型にはまることをよしとしない女子。ヒロインは皆おてんばで、何者かになろうと奮闘していた。その姿に己を重ねたのだ。その中で私の大好きなベスト5をセレクトしたい。

【1位:カーネーション(2011年下期)】

 ヒロイン糸子(尾野真千子)は、コシノ3姉妹を育てた小篠綾子がモデル。だんじり祭りで有名な、岸和田で生まれ育つ。女はつまらない、だんじりも曳けない、商売人にもなれないと小さい頃から悔しがる糸子。ミシンに出合い、洋裁で身を立てていく糸子の物語であるにも関わらず、「カーネーション」は働く女子に「成功せよ」と言わない。「堂々とせよ」と言う。女子へのエールだと思う。

 糸子は戦争で夫を失った後、妻子ある男性と恋に落ちる。朝ドラ史上空前絶後の「ヒロインの不倫」。その恋の切なさも特筆すべきものだが、もう一つ、「戦争」と向き合った作品だったことも強調したい。

 戦争は壮大な徒労でしかないということが、糸子を通して実にきちんと描かれていた。だが衝撃だったのは、戦争で息子を失ったある女性が、息子の「加害」を知る場面が描かれたことだ。描いた脚本家・渡辺あやは、1970年生まれ。戦後25年も経って生まれた女性が加害を描いた。その事実に感動する。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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