――その環境下で医療を。

 はい。ただ、外務省の医務官だと、基本、日本人を診るだけで、現地の人を診療できない。弱った子どもたちなどを目の当たりにしているのに、診療できない。それだったら――と外務省を退職して、ロシナンテスを立ち上げました。

――スーダンではどんな活動をしているのですか。

 巡回診療の運営のほかに、安定した医療を届けるために、現地に診療所を建設しています。また、不衛生な水が病気の原因でもあるので、古井戸の改修や水の浄化のための水事業も行っています。

――医療を通した町づくり、ですね。

 そうです。医療をベースに地域を開発することが目標で、インフラづくりに近いんです。安心した医療ができる体制をつくったほうが長続きする。そう考えて、いつでも診てもらえる診療所を建設しています。

――長期間かけて地域を開発するのですね。

 私たち日本人は、現地でいくら活動しても「よそ者」に変わりありません。ですので、最前線に立って診療するのは現地の医師のほうが望ましい。メディカルアシスタントたちと一緒に後方支援もしています。教育に乏しいスーダンでも、医学生の教育水準は、意外と高い。

医師は人を診るだけでなく
地域を診る

――目下の課題は?

 私たちがやれることは、アフリカのへき地医療をどうするか。過疎地域に診療所を建設するなどインフラを整えられれば、医療の質は大きく変わるはずです。

――医師を目指す学生にアドバイスをお願いします。

 医師は、人を診るもの。人を診るためには家族や地域、宗教など全体をつかまなければなりません。人とのつながりやかかわりを経験し、自分をさらけ出すことで「人間力」を培ってほしい。

(文・構成/井上和典)

※AERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』から抜粋