がんと付き合うときに何よりも大切なのは、自分の「スペア」になってくれる相手との関係だ。

 病気による痛み、抗がん剤の副作用、手術前後の麻酔。ふだん通りに頭が働かないケースはいくらでもある。そのとき、相手が自分並みかそれ以上に知識を持ち、同じ価値観で判断できるかどうかは、人生すら左右しかねない。スマートフォンを落とした時のためにデータを同期するのとは違い、相手から教えられたり、話し合いによってお互いの理解が深まったりすることもある。

 いざという時、あなたが頼みにするのは誰か。その人とは、どんな関係を築いているだろうか。

 大切なのは常に、いまこれから。変えうる将来だ。

 お読みになったみなさんは、例えばこんなことをやってみてはどうだろうか? 経験者である私からの提案は下記の3点になります。

【がんかも? 今日からやれる3つのこと】

 (1)本気でがんを早く見つけたいか、それは誰(何)のためか、考える。検査に万全を期しても早期発見できるとは限らないことも知っておく。
 (2)がんかもしれない、と言われたら、誰にどんな言い方で伝えるか。安心感ほしさに楽観せず、最悪の展開も考える。検査の予約などは早めに。「空白」をつくらない。
 (3)パートナーとの関係をよりよくするために何ができるか。これを読んだあと、実際にやってみる。
  ※主に患者本人を想定したもの。考えるときはいつも具体的に、情景を思い浮かべながら。いったん決めてもちゅうちょなく修正すること

 この文章を書いている最中、ふと思い立ち、外出ついでに桃の花を買ってきた。偶然だが、これが公開される3月3日は「桃の節句」。帰宅した配偶者が喜ぶ顔を見るのが楽しみだ。

 次回のコラムで私たち夫婦はついに病名を知ることになる。連日の検査で膵臓がんに絞り込まれていく日々は、自分の仕事、そして人生を振り返る機会でもあった。

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野上祐

野上祐

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

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